*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.37
◆女性の顔の幻視を見る
で、その頃Nさんは、「女性の顔の幻視を見ることもあった」とのことでしたね。
追い詰められたNさんは以前にも増して、女性のことを考えるようになっていたのかもしれませんね。暗い現実のなかに放り込まれたひとがしばしば、性や恋愛にヨリ多くの関心を寄せることは周知の事実なのではありませんか。ましてや、Nさんは思春期、真っ只なかですし、女性のことにのめり込んでいったとしても何ら不思議はありませんね?
ひょっとすると、勉強しないといけないとか、将来のことを真剣に考えないといけないとかいったようなときにも、しばしば、女性のことに気をとられ、しなければならないことがおろそかになってしまっていたのかもしれませんね。
でも、Nさんにしてみれば、自分がそうしたときにまで女性のことを考えたりするはずはなかったのかもしれません。
いや、いっそ、Nさんのその見立ても、少々語弊があるかもしれませんけど、こう言い改めてしまいましょう。Nさんには、自分がそうしたときにまで女性のことを考えているはずはない、という自信があったんだ、って。
で、その自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。
女性の顔のようなものが勝手に目のまえに浮かび上がってくる、って。
中学生の頃にも、そうしたことがあったのではないかと、引用第1部で推測しましたよね? いま、そのときに言ったのとおなじことを言っていますよ。
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その推測は下の記事でしました。
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2021年8月16日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/6)はこちら。
*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.5)。
- part.1(短編NO.33)
- part.2(短編NO.34)
- part.3(短編NO.35)
- part.4(短編NO.36)
- part.6(短編NO.38)
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。