(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(5/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9


◆実は異常ではない

 さあ、男子大学生さんが「隣から悪口が聞こえてくる」「頭の中に機械が埋め込まれている」と訴え、隣家に怒鳴り込んだり、頭の中の機械をとり除いてもらうべく脳外科を受診したりするというのがどういうことか、ここまで見てきました。


 果して俺は、その男子大学生さんのことをいま理解し得たと言えるでしょうか。いや、正直な話、男子大学生さんのことをいま完璧に理解し得たと胸を張れるとは、俺自身、まったく思ってはいませんよ。むしろ、男子大学生さんのことを多々誤ったふうに決めつけてしまったのではないかと気が咎めて肩を落としているところです。


 でも、こういった手応えは感じます。


 統合失調症と診断され、「理解不可能」と決めつけられてきたその男子大学生さんが実は理解可能だったということは、いまの考察からでも十分に明らかになったはずだ、って。


 みなさんのように申し分のない人間理解力をもったひとたちになら、その男子大学生さんのことが、完璧に理解できるにちがいないということを示すくらいのことは、いまの考察でも十分にできたはずだ、って。


 で、そうした手応えをヒシヒシと感じる俺は、さらにこう言えるだろうと考えます。その男子大学生さんは実は異常ではなかったんだ、って。


 つまり、こういうことですよ。


(精神)医学は健康を正常であること、病気を異常であることと定義づけてやってきましたよね。以前確認しましたように、ひとを正常と判定するというのは、そのひとのことを「理解可能」と認定するということ、かたやひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを「理解不可能」と認定するということをそれぞれ意味します。

  1. ひとを正常と判定するというのは、そのひとのことを「理解可能」と認定するということ。
  2. ひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを「理解不可能」と認定するということ。


(参考:そのことを確認したときの記事はこちら。)


(精神)医学は、男子大学生さんのことを異常と判定し、「理解不可能」と認定してきました。だけど、いまの考察の結果、男子大学生さんはほんとうは「理解可能」であると明らかになりましたね? したがって、「理解可能」であるその男子大学生さんのことを正常と判定することはできても、もはや異常と判定することはできないということになりますね?


 今回は、「隣から悪口が聞こえてくる」「頭の中に機械を埋め込まれている」と訴える、統合失調症と診断された、ひとりの男子大学生さんに登場してもらい、その男子大学生さんが(精神)医学の見立てに反し、ほんとうは理解可能であり異常ではないということを確認しました。

(次回短編はこちら)


次回は3月2日(月)21:00頃にお目にかかります。


ひとつまえの記事(4/5)はこちら。


今回の最初の記事(1/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(4/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9


◆「頭の中に機械が埋め込まれている」

 さて、男子大学生さんは初診時に、「隣から悪口が聞こえてくる」とこのように訴える他、「頭の中に機械が埋め込まれている」とも主張していたとのことでしたよね。就職後すぐ、また幻聴が聞こえるようになって眠れなくなったときも、「頭の中に埋め込まれた機械を取ってほしい」と脳外科を受診したと書いてありましたね。


 今度はこの「頭の中に機械が埋め込まれている」という訴えのほうを見ていきますね。


 さきほど「隣から悪口が聞こえてくる」という訴えを見ましたよね。男子大学生さんは自分の自信に合うよう、現実をこう修正解釈していたのではないかとのことでしたね。声が悪口を言ってきて、ボクを困らせるんだ、って。で、その声の出所を隣家と考えたんじゃないか、って。


 でもひょっとするとその声の一部についてはこう考えたのかもしれませんね頭の中に機械でも埋め込まれていてそこから聞こえてくるのだとしか思えない、って。そうじゃなきゃ説明がつかない、って。


 実際、精神科医は、先の男性患者さんやこの男子大学生さんが聞こえてくると訴えるこうした声を幻聴と呼んで、こんなふうに説明します。

 妄想気分とともに〔引用者補足:統合失調症に〕出現しやすいのは幻聴である。幻聴は「声」「テレパシー」「耳鳴り」と表現されることもある。「耳がうるさい」「周囲が騒々しい」「頭に機械を埋め込まれているといった言い方をすることもある岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、p.92。ただしゴシック化は引用者による)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

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 けど、男子大学生さんのこの「頭の中に機械が埋め込まれている」という訴えは、可能性は低いかもしれませんけど、むしろ、つぎのようなことだったのかもしれないといった気が、俺にはしないでもありません。


 男子大学生さんは、何かが気になるあまりそのことについて考えるのを止められなくなっていたということなのかもしれない、って。


 気になっていたのは勉強や仕事のことかもしれませんし、あるいは何か他の心配ごとなのかもしれませんけど、ともあれ、慣れない環境や重圧のかかる状況などにいるときなどは特に、そんなふうに何かがしきりと気になって、そのことについて考えるのを止められなくなってしまうようなことって、誰しもありますよね?


 たとえば、車を買ったばかりのときなど、愛車に早速ついた傷のことが気になって、そのことについて考えるのを止められなくなってしまうようなこと、みなさん、ありません? もしくは、あるひとのことが気になるあまり、ずっとそのひとのことを考えてしまって他のことが手に着かなくなるようなこと、ありませんか。


 ひとつの心配ごとについて、何度もおなじことを考えてしまうようなこととか、みなさん、ありません?


 男子大学生さんもひょっとすると、学生時代や就職活動中または就職直後、そんなふうに、自分の思考がコントロールできなくなったのかもしれませんね?


 だけど男子大学生さんには自信があった。自分は自分のことをコントロールできるはずだといった自信が。なのに、勉強や仕事のこと、もしくは他の気がかりな何かについて、つい考え詰めてしまって、どうしても考え止めることができない。


 男子大学生さんは首をひねる。


 自分は自分のことをコントロールできるはずなのにおかしいなあ。こんなことは起こり得るはずがないんだがなあ……あ、でも、ちょっと待てよ、さては、頭の中に機械が埋め込まれているな? そうかなるほど解けたぞ! それで自分のことがコントロールできなくなっているのか!


「先生、手術で、頭のなかに埋め込まれた機械を取ってくださいよ!」


 いまこういう場面を想像しましたね。男子大学生さんは、自分のことをコントロールできなくなるという「現実」に直面していた。だけどその反面、男子大学生さんには、自分は自分のことをコントロールできるはずだという「自信」があった。そのように、男子大学生さんの直面している「現実、男子大学生さんのもっている「自信とは背反していた。俺には、そんなふうに「現実」と「自信」とが背反しているとき、ひとにとることのできる手はつぎのふたつのうちのいずれかであるように思われます。

  • A.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • B.自信に合うよう現実のほうを修正する


 で、そのとき、男子大学生さんは後者Bの「自信に合うよう、現実を修正解釈する」手をとった。自分は自分のことをコントロールできるはずだという「自信」に合うよう、「現実」をこう修正解釈した。


 頭の中に機械が埋め込まれているんだ。そうでもなければ、自分が自分のことをこんふうにコントロールできなくなるはずはないんだ、って。


 以上についても箇条書きにしておきましょう。

  • ①自分の思考をコントロールできない(現実
  • ②自分の思考を自分がコントロールできないはずはないといった自信がある(現実と背反している自信
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「頭の中に埋め込まれた機械のせいだ」(現実修正解釈


ひとつまえの記事(3/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


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統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(3/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9


 つまり、こういうことですよ。


 たとえば、大学から帰宅したあと部屋でひとりになった男子大学生さんが、自分はひとに内心「勉強できなさそうだなあ」とか「家にばかりいて何してるの?」といったように悪く思われているのではないかとしきりに気にしているような場面をひとつ、想像してみてくれますか。ところが、その男子大学生さんには自信があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。で、その自信に合うよう、男子大学生さんは現実をこう解した


 ひとの声がしきりに「勉強できなさそうだなあ」とか「家にばかりいて何してるの?」と悪口を言ってきて、ボクを困らせる、って。


 でも、その声はいったいどこから聞こえてくるのだろうと男子大学生さんには不思議でならなかった。男子大学生さんは考えた。そして考えに考えた挙げ句、あるとき、こう確信した。「隣の家からだとしか考えられない」。そしてそれから数年後、「就職して半月ほどして、また幻聴が聞こえるようになり、眠れなくなった」とき、とうとう我慢の限界に達し、「もう聞き捨てならない」とばかりに隣家へ怒鳴り込んでいくことになった  


 男子大学生さんの「隣から悪口が聞こえてくる」という訴えから、俺はそのような場面を思い描いたりしますが、みなさんはどうですか。


 ここでも、いま見たところを箇条書きにしておきますね。内容は、最初にふり返った男性患者さんの場合とまったくおなじですけど。

  • ①ひとに内心悪く思われているのではないかと気にしている(現実
  • ②ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信がある(現実と背反している自信
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「声が悪口を言ってくる」(現実修正解釈


ひとつまえの記事(2/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(2/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9


◆「隣から悪口が聞こえてくる」

「隣から悪口が聞こえてくる」という前者の訴えについては以前どこかで考察したような気が、みなさん、しませんか。何か思い出しません?


 統合失調症と診断されたつぎの男性患者さんのことをまえに見たの、覚えていませんか。その男性患者さんもこの男子大学生さんのように「悪口が聞こえてくる」と訴えていましたよね。

 家族から、よく電話で浪費を諫められている男性患者は、電話でガミガミ叱責された後で、幻聴がすると訴えた。幻聴は、「小遣いばかり使って」「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と自分を非難する内容だった(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、p.95)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

 


 その男性患者さんのことを俺、たしかこういうふうに想像しましたよ。


(参考:そのときの記事はこちら。)


 男性患者さんは、家族から電話で浪費を諫められたあと、他のひとたちにも内心、「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」といったように悪く思われているのではないかと気にするようになったのでは、って。しかし、そのいっぽうで男性患者さんには自信があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。で、その自信に合うよう現実をこう解したのではないか、って。


 ひとの声が「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と悪口を言ってきて、ボクを困らせる、って。


 男性患者さんのその現実解釈を復習してみましょうか。こういうものであるとのことでしたよね。


 男性患者さんには「自信」があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。だけど「現実はそうした自信とは背反していた。実にそのとき男性患者さんは、ひとに内心悪く思われているのではないかとしきりに気にしていた。俺には、そんなふうに「自信」と「現実」とが真っ向から背反しているとき、ひとにとり得る手はつぎのふたつのうちのいずれかであるように思われます。

  • A.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • B.自信に合うよう、現実のほうを修正する


 男性患者さんはそこでまさに後者B(自信に合うよう、現実を修正解釈する手)をとったのではないか、ということでしたね。


 いま言ったことを箇条書きでまとめるとこうなります。

  • ①ひとに内心悪く思われているのではないかと気にしている(現実
  • ②ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「声が悪口を言ってくる」(現実修正解釈


 初診時に、「隣から悪口が聞こえてくる」と訴えた先の男子大学生さんも、いまふり返った男性患者さんとおなじように現実を、現実に背反している自信に合うよう修正解釈していたのではないでしょうか。


ひとつまえの記事(1/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(1/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9

目次
・ほんとうは「理解可能」である
・「隣から悪口が聞こえてくる」
・「頭の中に機械が埋め込まれている」
・実は異常ではない


◆ほんとうは「理解可能」である

 この世に「理解不可能なひとなどただのひとりも存在し得ないということを以前、論理的に証明しましたよね。


(参考:いちおうそのときの記事を載せておきますね。)


 だけど医学はこの世に理解不可能な人間は存在するとします。


 たとえば(精神)医学は一部のひとたちを統合失調症と診断し、「理解不可能」と決めつけてきました。


 ほら、ちょっと聞いて確かめてみてくださいよ。

かつてクルト・コレは、精神分裂病〔引用者注:当時、統合失調症はそう呼ばれていました〕を「デルフォイの神託」にたとえた。私にとっても、分裂病人間の知恵をもってしては永久に解くことのできぬ謎であるような気がする。(略)私たちが生を生として肯定する立場を捨てることができない以上、私たちは分裂病という事態異常」で悲しむべきこととみなす「正常人」の立場をも捨てられないのではないだろうか(木村敏『異常の構造』講談社現代新書、1973年、p.182、ただしゴシック化は引用者による)。

異常の構造 (講談社現代新書)

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 木村精神科医は「永久に解くことのできぬ謎」と言っていましたよね。


 なら、こちらはどうですか。

 専門家であっても、彼らの体験を共有することは、しばしば困難である。ただ「了解不能」で済ませてしまうこともある。いや、「了解不能であることがこの病気の特質だとされてきたのである。何という悲劇だろう(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、p.30、ただしゴシック化は引用者による)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

 


 岡田精神科医は「了解不能」といった言い方をしていましたね。


(精神)医学はこのように、ほんとうは「理解可能」であるそのひとたちを、不当にも「理解不可能」であるということにして、差別してきました。


 今回は、そうして差別されてきたひとたちのなかから実際にひとり登場してもらい、そのひとがほんとうは理解可能であるということを実地に確認してみますよ。


 早速ですけど、つぎの男性のことをみなさんならどんなふうに想像しますか。小説を読んでいるようなつもりで、つぎの男性のことをひとつ、活き活きと思い描いてみてくれませんか。

「頭の機械をとってほしい」

 初診時二十一歳の男性。大学生だったときに、「隣から悪口が聞こえてくる」「頭の中に機械が埋め込まれている」と言い出し、大学病院の精神科を受診したところ、幻聴や妄想の症状から統合失調症と診断されて半年間入院。大学は中退した。その後、しばらく落ち着いたものの、就職して半月ほどして、また幻聴が聞こえるようになり、眠れなくなった。「頭の中に埋め込まれた機械を取ってほしいと脳外科を受診したり隣家に怒鳴り込んでいくなどしたため、精神科の病院に入院となる。その後、就職を試みるたびに症状の悪化をきたし、同じことを言い出した。悪化すると薬を飲まなくなり、余計不安定となって、入院するということを何度も繰り返した。


 しかし、四十歳を過ぎた頃から、無理に就職しようとしなくなり、それとともに、悪化をきたすことはなくなった。保健センターで行われるグループワークに定期的に参加し、老母の面倒をみながら、安定した生活を送っている(前掲書p.48、ただしゴシック化は引用者による)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

 


 男性(以下、男子大学生さんと呼ぶことにしますね)は大学生の頃に「隣から悪口が聞こえてくる」「頭の中に機械が埋め込まれている」と言い出したと書いてありましたね。


 そのふたつの訴えを順にいまから見ていきましょう


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「悪口が聞こえてくる(幻聴)」を理解する(統合失調症理解#1)(5/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.8


 さて、ここまで、(精神)医学に実際に統合失調症と診断され、「理解不可能」と決めつけられてきたひとりの男性患者さんを見てきました。


 みなさん、どうでした?


 その男性患者さんはほんとうに、(精神)医学が言うように、「理解不可能」でしたか。


 いや、そんなことありませんでしたよね。十分、「理解可能でしたよね。


 もちろん、その男性患者さんのことをいま完璧に理解し得たと言うつもりは、俺にはまったくありませんよ。正直な話、その男性患者さんのことを、多々誤ったふうに決めつけてしまったのではないかとしきりに気が咎めて、肩を落としているくらいですよ。


 でも、そうは言うものの、その男性患者さんが、(精神)医学の見立てに反し、ほんとうは「理解可能」であるということは、いまの考察からでも十分明らかになりましたね?


 申し分のない人間理解力をもったみなさんになら、その男性患者さんのことが完璧に理解できるということは、十分明白となりましたよね?


 そしてこのように男性患者さんが「永久に解くことのできぬ謎」なんかでは決してないということからはさらに、この男性患者さんが実は異常ではないということがあらたにわかります。


 どういうことか。最後にそのことを確認して終わりとしますね。


 簡単に言うとこういうことです。


(精神)医学は健康を正常であること、病気を異常であることと定義してやってきましたよね。そのように、ひとを正常と判定するというのは、そのひとのことを「理解可能」と認定するということ、かたや、ひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを「理解不可能」と認定するということを、それぞれ意味します(以前に確認したことですよ)。

  1. ひとを正常と判定するというのは、そのひとのことを「理解可能」と認定するということ。
  2. ひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを「理解不可能」と認定するということ。


(参考:そのことを確認したときの記事をいちおう挙げておきます。)


(精神)医学は、今回登場してもらった男性患者さんのことを異常と判定し、「理解不可能」と決めつけてきました。だけど、男性患者さんは、今回確認しましたように、ほんとうは「理解可能」です。そのようにほんとうは「理解可能」である男性患者さんのことを、異常と判定することはできませんね(いまさっき挙げた2番をよく見てくださいよ)? 


(精神)医学に異常と判定され、統合失調症と診断されてきたその男性患者さんは、実は異常ではないということになりますね?


 今回は、電話で家族に浪費を諫められたあと、悪口が聞こえてくると訴える、統合失調症と診断された男性患者さんに登場してもらい、その男性患者さんがほんとうは、(精神)医学の見立てに反し、「理解可能であるということ、したがって実は異常ではないということを確認しました。


2020年2月14,15日に文章を一部修正しました。


次回は2月17日(月)21:00頃にお目にかかります。


ひとつまえの記事(4/5)はこちら。


今回の最初の記事(1/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.7)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。


以前にも統合失調症の「症例」を挙げ、今回のように考察したことがあります。

 

 

統合失調症の「悪口が聞こえてくる(幻聴)」を理解する(統合失調症理解#1)(4/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.8


 では、いまからこの①から③までをすこし吟味してみますよ。


 まず①(現実)を見てくれますか。この男性患者さんのように、誰かに責められたあと、他のひとたちにも内心悪く思われているのではないかとしきりに気になってくるようなことって、多かれ少なかれ、誰しもあることではありませんか。そんなに珍しいことではありませんよね? むしろ、そうした感じ方をするこの男性患者さんにいま、みなさんは、「わかる、自分もそういうこと、よくあるよ!」と共感したのではありませんか。


 今度は、②(現実と背反している自信)と③(現実修正解釈)を一緒に見てみましょうか。


 さっき、こう推測しましたよね。男性患者さんは、「自信」と「現実」とが背反するに至った場面で、その「自信」に合うよう、現実を修正する手(B)をとったのではないか、って。どうですか、みなさん。そんなふうに現実修正解釈をするひと、みなさんの周りにもたくさん見つかりませんか。


 たとえば、仕事で失敗をしたという「現実」を、自分が仕事で失敗をするはずがないといった「自信」に合うよう修正(解釈)し、「部下に足を引っ張られた」ということにしてしまったりするひと、いませんか。もしくは、ひととうまく接することができている(現実)のに、自分がひととうまく接することができているはずがないといった「自信」に合うよう現実を修正(解釈)し、「みんなが我慢して私に合わせてくれている」ということにして、自責しているようなひと、みなさんの近くに見かけませんか。


 またみなさん自身もふだん、現実修正解釈をすること、ありませんか。俺はありますよ。ふり返ってみると、知らず知らずのうちに現実修正解釈をよくしていることに気づきます。


 現実修正解釈(②+③、つまりB)をするのは、何も、統合失調症と診断されたひとたちだけではありませんよね? 日常、誰もがよくしますよね? ①も、②③も、共にみなさんに馴染みのものですね?


2020年2月14日に文章を一部修正しました。


ひとつまえの記事(3/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.7)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。