*認知症の人間の言動は理解不可能か・第10回
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この世に「理解不可能」な人間など存在し得ないことを最初に理論的に証明したけれども*1、医学はこれまでひとを認知症や軽度認知障害などと診断し、「異常」と見なすことによって、そのひとたちの言動に「理解不可能」の烙印を押してきた。
そこで、認知症に分類される、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病、の4つをその順に一つひとつとり挙げ、それらの各症状がほんとうにその理論どおり「理解可能」か検証することにした。
ここまで、次に再掲するアルツハイマー型認知症の症状一覧に従い、冒頭の五つ(Aの①から⑤)を点検し、そのどれについても、「理解可能」であるらしいという手応えを得ている。
ちなみに、この症状一覧は長谷川和夫著『よくわかる認知症の教科書』(朝日新書、2013年)のなかの、アルツハイマー型認知症に関する記述をもとに先に作成しておいた*2ものである。
今回はB(中等度)の①を見る。
A.初期段階
①物忘れが次第に激しくなる(記憶機能の低下)
数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりするようになる。
②段取りを立てて物事を行うことができなくなる(実行機能障害、手順の障害)
言葉のやりとりが難しくなったり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)、料理などができなくなったりする。
③不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態
④物盗られ妄想をするようになる
財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にし、「盗まれた」と主張する。
⑤作話
事実とは異なることを話のなかに織り込む。
B.中等度①見当識が失われる(失見当)
季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁したりする。
②失行
ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなる(着衣失行)
C.高度認知症①対象を認識できなくなる(失認)
いっしょに暮らしている家族の顔がわからなくなる(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難)が起こる。
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