*認知症の人間の言動は理解不可能か・第5回
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◆アルツハイマー病の症状一覧
最初に見るのは、アルツハイマー病と診断されたひとたちの言動である。
アロイス・アルツハイマーは、ドイツの精神科医で、20世紀初頭に、若年性の認知症の症例をはじめて報告したことからこの病名が由来します(略)。
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の外側に、異常なタンパク質が集まってアミロイドβタンパクの塊をつくります。この塊は、脳の表面に斑点のように見えることから「老人斑」と呼ばれます(略)。しかし、アミロイドβタンパクが蓄積しても、認知症が発症しないことも少なくありません。
初期段階では「年のせい」と考えて気づかないことがあります。ほとんどの方は長期にわかって歩いたり、食事したりといった日常的な動作能力が保たれています。
初期段階で、脳の記憶の入り口とされる海馬という部分の周辺(側頭葉)の神経細胞が冒されることから記憶機能の低下を起こします。物忘れが次第に激しくなり、数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからくなって、周囲に何回も同じことを聞いたりするようになります(略)。
中核症状として、物忘れのほか、言葉のやりとりが難しくなり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じなくなる)、料理など段取りを立てて物事を行うことができなくなります(実行機能障害、手順の障害)(略)。
BPSDとしては、不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態のほか、物盗られ妄想、作話(つくり話)をするようになります。
物盗られ妄想とは、財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にして、「盗まれた」と主張します。
作話は、事実とは異なることを話のなかに織り込むことです(略)。
中等度になると、見当識が失われ(失見当)、季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって、道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁することもあります。また、失行といい、ポールペンなどこれまで当たり前に使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなる(着衣失行)などもこの時期です。
高度認知症になると、失認といい、対象を認識できなくなります。たとえば、いっしょに暮らしている家族の顔もわからなくなります(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難、195ページ参照)が起こり、やがて自分で座ることさえできなくなり、寝たきりになることから褥瘡(床ずれ、200ページ参照)ができやすくなります。最後に意識が低下し、混迷から昏睡状態となり、死を迎えます。
ただ、必ずしもこのように軽度から高度へ進行するものではなく、個人差があり、中には高度になっても簡単な会話はできる方もいます(長谷川和夫『よくわかる認知症の教科書』朝日新書、2013年、31〜35頁、ただし太字化は引用者による)。
いまの解説では、アルツハイマー型認知症の症状なるものが、初期段階、中等度、高度の三つに分けられていた。それら症状なるものは「異常(障害)」と見なされ、「理解不可能」の烙印を押されてきた言動の数々であるが、それらがほんとうに、俺たちが出くわすことになった理論どおり「理解可能」であるか、その初期段階のものから順に一つひとつ点検していく。
その症状なるものをその三期に分けて再度箇条書きでまとめるとこうなる。
A.初期段階
①物忘れが次第に激しくなる(記憶機能の低下)
数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりするようになる。
②段取りを立てて物事を行うことができなくなる(実行機能障害、手順の障害)
言葉のやりとりが難しくなったり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)、料理などができなくなったりする。
③不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態
④物盗られ妄想をするようになる
財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にし、「盗まれた」と主張する。
⑤作話
事実とは異なることを話のなかに織り込む。
B.中等度①見当識が失われる(失見当)
季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁したりする。
②失行
ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなったりする(着衣失行)
C.高度認知症①対象を認識できなくなる(失認)
いっしょに暮らしている家族の顔がわからなくなる(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難)が起こる。
