(新)Nothing happens to me.

科学には、人間を理解することを妨げる理論的欠陥がある

アルツハイマー型認知症①:ついいまさっきのことを忘れてしまう理由(3/5)

認知症の人間の言動は理解不可能か・第5回

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◆ひとつ目の症状:物忘れが次第に激しくなる

 今回は初期段階の①「物忘れが次第に激しくなる」のみをとり挙げる。それは先の引用文中では「記憶機能の低下」と説明されていた。そしてその具体例として、「数分前に食事したことを忘れる」と「曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりする」が挙げてあったけれども、それら言い回しからそうした言動が「ついいまさっきのことすら思い出せない状態」と解されているのがわかる。ついいまさっきのことなら誰だって覚えているはずなのに、そんなことすら忘れてしまうだなんて、「理解できない」、異常だ、記憶障害だ、という具合である。


 しかしほんとうに「理解不可能」か。


 実は、「ついいまさっきのことすら思い出せない」という体験を普段誰もがみなしている。幾つか挙げてみよう。


 たとえばみなさんはシャワーを浴びているときに、ついいまさっきシャンプーをしたのだったか、それともこれからするところだったか、わからなくなることはないか。


 あるいは朝、家を出て歩いている最中にふと、玄関の鍵をかけてきたかどうか気になって必死に思い出そうとするが、ついいまさっきのことなのに全く思い出せない、といったことはないか。


 いや、鍵の代わりに、電気もしくはガスを切ってきたかどうか気になって思い起こそうとするが、全然思い出せないといった場面を考えてくれても構わない。


 おそらくあるのではないだろうか。


 では、みなさんがそうした「ついいまさっきのことすら思い出せない」体験を普段しているときその身に起こっているのは一体何か。


 ついいまさっきシャンプーをしたのにシャンプーを済ませたところか、それともこれからするところだったかわからなくなるといったような場合、みなさんはシャンプーをするという行為に、ぼーっとしていたり、あるいは何か他事に気をとられていたりして集中していなかったのではないか?


 要するに、シャンプーを上の空でしていたのではないか。


 家を出て歩いている途中ふと不安になって、鍵をかけてきたか、または電気もしくはガスを切ってきたか思い出そうとするが、ついいましがたのことなのに全く思い出せないという場合も、鍵をかけていたとき、または電気もしくはガスを切っていたとき、ぼーっとしているとか、他事を考えているとかして、鍵をかけるという行為に、または電気もしくはガスを切るという行為に集中していなかったのではないか?


 つまり、「上の空」で鍵をかけたり、「上の空」で電気もしくはガスを切ったりしていたのではないか?


 だとすると、そのことから何が言えるか。


 それは、「上の空でしていたことはついいまさっきのことでも思い出すのは難しい、ということである。


 そのことを更に例を幾つか出して、もう少し検証してみよう。




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