*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.28
いまの推測をふり返ってみますね。
小林さんが布団のなかで、いろんなひとや団体のことを思い浮かべながら、「協力してほしい」と、ちからを込めて強く願っていたところ、手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしてきた(現実)。ところがその小林さんには、ほんとうならこんなときにボクの手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしているはずはないという「自信」があった。このように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、先にも言いましたように、つぎのふたつのうちのいずれかであるように俺には思われます。
- A.「現実」に合うよう、「自信」のほうを訂正する。
- B.「自信」に合うよう、「現実」のほうを修正する。
で、小林さんはこの場面でも後者Bの「自信に合うよう、現実のほうを修正する」手をとった。すなわち、ほんとうなら自分の手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしているはずはないとするその自信に合うよう、現実をこう解した。
ほんとうならこんなときに手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしているはずはない。なのに実際は、手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしている。きっとこれは特別な理由があってのことにちがいないな。あ、そうか、わかったぞ、これはテレパシーだ! ボクのお願いにみんながこうした感覚の形で応えてくれているんだ。
箇条書きにしてまとめてみますね。
- ①布団のなかで、いろんなひとや団体のことを思い浮かべながら、「協力してほしい」と、ちからを込めて強く願っていたところ、手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしてきた(現実)。
- ②ほんとうならボクの手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)。
- ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「ほんとうならこんなときに手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしているはずはない。なのに実際は、手足が震えたり、背中がぞくぞくしたりしている。きっと、これは何か特別な理由があってのことにちがいないな。あ、そうか、わかったぞ、これはテレパシーだ! ボクのお願いにみんながこうした感覚の形で応えていれているんだ」(現実を自分に都合良く解釈する)
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