(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「頭の中に機械が埋め込まれている」を理解する(統合失調症理解#2)(2/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.9


◆「隣から悪口が聞こえてくる」

「隣から悪口が聞こえてくる」という前者の訴えについては以前どこかで考察したような気が、みなさん、しませんか。何か思い出しません?


 統合失調症と診断されたつぎの男性患者さんのことをまえに見たの、覚えていませんか。その男性患者さんもこの男子大学生さんのように「悪口が聞こえてくる」と訴えていましたよね。

 家族から、よく電話で浪費を諫められている男性患者は、電話でガミガミ叱責された後で、幻聴がすると訴えた。幻聴は、「小遣いばかり使って」「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と自分を非難する内容だった(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、p.95)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

 


 その男性患者さんのことを俺、たしかこういうふうに想像しましたよ。


(参考:そのときの記事はこちら。)


 男性患者さんは、家族から電話で浪費を諫められたあと、他のひとたちにも内心、「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」といったように悪く思われているのではないかと気にするようになったのでは、って。しかし、そのいっぽうで男性患者さんには自信があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。で、その自信に合うよう現実をこう解したのではないか、って。


 ひとの声が「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と悪口を言ってきて、ボクを困らせる、って。


 男性患者さんのその現実解釈を復習してみましょうか。こういうものであるとのことでしたよね。


 男性患者さんには「自信」があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。だけど「現実はそうした自信とは背反していた。実にそのとき男性患者さんは、ひとに内心悪く思われているのではないかとしきりに気にしていた。俺には、そんなふうに「自信」と「現実」とが真っ向から背反しているとき、ひとにとり得る手はつぎのふたつのうちのいずれかであるように思われます。

  • A.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • B.自信に合うよう、現実のほうを修正する


 男性患者さんはそこでまさに後者B(自信に合うよう、現実のほうを修正する手)をとったのではないか、ということでしたね。


 いま言ったことを箇条書きでまとめるとこうなります。

  • ①ひとに内心悪く思われているのではないかと気にしている(現実
  • ②ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「声が悪口を言ってくる」(現実修正解釈


 初診時に、「隣から悪口が聞こえてくる」と訴えた先の男子大学生さんも、いまふり返った男性患者さんとおなじように現実を、現実に背反している自信に合うよう修正解釈していたのではないでしょうか。


2020年5月23日に文章を一部訂正しました。


ひとつまえの記事(1/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.8)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。