(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「わたしはエスパーだ」「頭のなかを監視されている」を理解する(統合失調症理解#3)(2/10)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.10


◆場面1

 Aさんは大手スーパーに入社したときのことから語りはじめていましたね。

 入社した当初は、研修などで同期の仲間どうしで話すことが多く、先輩と仲良くなる前に男の子と話す機会のほうが多くありました。すると突然社内で「Aさんは誰々とつきあっている」という噂がはじまりました。


 ということでしたね。そして、

 うわさはどんどんエスカレートして、ついには「男好き」とか「次から次へと男にちょっかい出して、あの新しく入った新入社員の女は何!?」などと言われはじめるようになりました。


 とのことでしたよね。


 Aさんは、Aさんが男性と喋っているところを見た他の社員たちに陰で噂されているのではないかと気にし出したのかもしれませんね。「Aさんは誰々とつきあっている」とか「男好き」だとか「次から次へと男にちょっかいを出して、あの新しく入った新入社員の女は何!?」と陰で噂されているのではないか、って。


 でも、自分がそんなことを気にしているという自覚はAさんにはなかった。いや、すこし語弊のある言い方になってしまうかもしれませんけど、こう言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。Aさんには、「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信があった、って。で、その自信に合うよう、Aさんは現実をこう解したということなのかもしれませんね。


 他の社員たちがわたしのことを噂しているのが耳に入ってくるようになった、って。 


 いまこういう推測をしましたよ。ふり返ってみますね。


 Aさんが男性と喋っているところを見た他の社員たちに、陰で噂されているのではないかとAさんは気にし出した(現実)。ところが、そのいっぽうでAさんには自信があった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信が。そのように「現実自信とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手はつぎのふたつのうちのいずれかであるように俺には思われます。

  • ア.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • イ.自信に合うよう現実のほうを修正する


 で、この場面でAさんは後者イの「自信に合うよう、現実のほうを修正する」手をとった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といったその自信に合うよう、現実をこう解した。


 他の社員たちがわたしのことを噂しているのが、耳に入ってくるようになった、って。


 いまの推測を箇条書きしてまとめるとこうなります。

  • ①Aさんが男性と喋っているところを見た他の社員たちに、陰で噂されているのではないかと気になり出した(現実
  • ②「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信がある(現実と背反している自信
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「他の社員たちがわたしのことを噂しているのが、耳に入ってくるようになった」(現実修正解釈


 さあ、いまの要領で、どんどんつづきを見ていきますよ。


2020年4月18日に、内容はそのままに文字を一部追加しました。

ひとつまえの記事(1/10)はこちら。


前回の短編(短編NO.9)はこちら。


このシリーズ(全26短編を予定)の記事一覧はこちら。