*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.35
◆paer.3の締めの言葉
以上、今回は、引用第2部を見てきました。Nさんがかなり追い詰められてきているのがよくわかったのではないでしょうか。慶応大学の最難関学部に入学するつもりである。そのためには勉強しなければならない。ところが、同級生たちに内心悪く思われているのではないかとしきりと気になって、勉強がまったく手につかない。成績も芳しくなく、ついには受験に失敗した。本人にもどうやら落ちこぼれているという実感が出てきたようで、ひととすれ違う際、「社会に自分の居場所なんか無い」と肩身の狭さを感じたり、「自分なんかダメだ」と劣等感を覚えたりするまでになっている、ということでしたね。
ただし、自分のことがうまく理解できず、自分が肩身の狭さを感じたり、劣等感を覚えたりしていることに、Nさん自身まったく気づいていない、ということでしたけど。
冒頭で宣言しましたとおり、つぎの3点が確認できましたね。
- 完全に勉強が手につかなくなり、成績もかなり悪くなってしまったこと。
- 「社会に自分の居場所なんか無い」と感じたり、通りすがりのひとたちに劣等感を覚えたりするまでになってしまったこと。
- 自分のことがうまく理解できないでいること。
さあ、みなさん、どうでした? 今回もまた、Nさんに、「理解不可能」なところはただのひとつも見つからないと思いませんでしたか?
いや、もちろん、いまNさんのことを完璧に理解し得たと言うつもりはありませんよ。正直なところ、Nさんのことを多々誤ったふうに決めつけてきてしまったのではないかと気が咎め、胃の辺りに激しい膨満感を覚えているくらいですよ。
でも、さすがに、今回見てきたNさんが「理解可能」だったこと自体は疑えませんよね?
みなさんのように申し分のない人間理解力をもったひとたちになら、今回のNさんが完璧に理解できるということは、いま十分、明らかになりましたね?
次回は引用第3部を、引きつづきこの要領で見ていきます。
2021年8月14日に文章を一部修正しました。
次回は2週間後、2月15日(月)21:00頃にお目にかかります。
*今回の最初の記事(1/8)はこちら。
*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.3)。
- part.1(短編NO.33)
- part.2(短編NO.34)
- part.4(短編NO.36)
- part.5(短編NO.37)
- part.6(短編NO.38)
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。