*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.36
いまこう推測しましたよ。
予備校にいると、自分が2浪生であることなどが意識され、「自分みたいなバカ」が「居ていい場所ではない」と引け目を感じる(現実)。だけどそのNさんには、自分が「引け目」を感じているはずはないという「自信」がある。このように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつのうちのいずれかであるように、ここでも俺には思われます。
- A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
- B.その背反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。
で、Nさんはその場面でも後者Bの「現実のほうを修正する」手をとった。自分が「引け目」を感じているはずはないとするその自信に合うよう、現実をこう解釈した。
他の予備校生たちが「このバカ」「うぜえ(ここはお前の居場所では無い)」と言ってくるのが、聞こえる、って。
いまの推測を箇条書きにしてまとめるとこうなります。
- ①予備校にいると、「自分みたいなバカ」が「居ていい場所ではない」と引け目を感じる(現実)。
- ②自分が「引け目」を感じているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)。
- ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「他の予備校生たちが『このバカ』『うぜえ(ここはお前の居場所では無い)』と言ってくるのが、聞こえる」(現実修正解釈)
もしかすると、自分が引け目を感じていることにNさん自身、気づいていなかったのではないか、ということですよ。
やっぱり、自分のことをうまく理解できていなかったのではないか、ということです。
2021年8月15日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/9)はこちら。
*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。
- part.1(短編NO.33)
- part.2(短編NO.34)
- part.3(短編NO.35)
- part.5(短編NO.37)
- part.6(短編NO.38)
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。