*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.29
いまこう推測しました。振り返ってみますね。
朝の4時ころ、新聞配達の物音がした(現実)。しかし小林さんには、ふつうこんな時刻にひとが配達に来ているはずはないという「自信」があった。このように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとり得る手は、つぎのふたつのうちのいずれかであるように、俺には思われます。
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A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
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B.その背反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。
で、その場面でも小林さんは後者Bの「現実のほうを修正する」手をとった。ふつうこんな時刻にひとが配達に来ているはずはないとするその自信に合うよう、小林さんは現実をこう解した。
誰かが何か特別なものをもって来たようだな。政府の命を受けた誰かが「妹に、僕の扱いに関する指令を届け」に来たにちがいないな。
箇条書きにしてまとめると、こうなります。
- ①新聞配達の物音がした(現実)。
- ②ふつうこんな時刻にひとが配達に来ているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)。
- ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「誰かが何か特別なものをもって来たようだな。政府の命を受けた誰かが妹に、ボクの扱いに関する指令を届けに来たにちがいないな」(現実を自分に都合良く解釈する)
2021年11月8,9日に文章を一部修正しました。
*前回の短編(短編NO.28)はこちら。
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。