(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

統合失調症の「いじめなど無いのに、いじめが深刻で、勉強に集中できない」「同級生や通行人に悪口を言われるのが聞こえる(幻聴)」「女の子のことで頭がいっぱいになる」を理解する(3/8)【統合失調症理解#16-vol.3】

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.35


 いまこう推測しましたよ。くどくどと振り返ってみますね。


 問題集を開いて勉強しようとしていると、同級生たちに内心「うぜえ」とか「死んじまえ」とかと思われているのではないかと気になってくる(現実)。しかしそのNさんには、自分がそんなことを気にしているはずはないという「自信」がある。このように「現実自信とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつのうちのいずれかであるように俺には思われます。

  • A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
  • B.その背反を解消するために、「現実のほうを、「自信」に合うよう修正する


 では、もしその場面でNさんが前者Aの「自信のほうを訂正する」手をとっていたら、どうなっていたか、ひとつ想像してみましょうか。


 もしとっていたら、Aさんは、たとえばこんなふうに自分の「自信」を改めることになっていたかもしれませんね。


「ああ、勉強中なのに、なんとボクは、同級生たちにどう思われているかなんてことを気にしてるよ! がっかりだよ。しっかりしろよ、ボク!」


 でも、その場面でNさんが実際にとったのは後者Bの「現実のほうを修正する」手だった。自分が同級生たちに悪く思われているのではないかと気にしているはずはないとするその自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。


「うぜえ」とか「死んじまえ」とかといった同級生たちの声が聞こえてくる、って。


 箇条書きにしてまとめるとこうなります。

  • ①同級生たちに「うぜえ」とか「死んじまえ」とかと思われているのではないかと気になる(現実)。
  • ②そんなことを気にしているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「『うぜえ』とか『死んじまえ』とかといった同級生たちの声が聞こえてくる」(現実修正解釈


 要するに、同級生たちに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしていることにNさん自身、気づいていなかったのではないかということですよ。


 自分のことがうまく理解できていなかったのではないか、ということです。





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2021年8月14日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/8)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.3)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.4(短編NO.36)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。