(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「思春期に発症し、典型的な経過がみられたケース」を理解するpart.3(統合失調症理解#16)(2/8)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.35


◆いじめが深刻になってきて勉強どころではない

 高校卒業間近には、卒業できないかもしれないと心配されるほど、学校の成績は悪くなっていたということでしたね。あまり勉強していなかったのでしょうね。


 でも、俺、こう思います。勉強しないといけないとNさん自身もよくわかっていた、いや、Nさんが一番そのことをわかっていたのではないか、って。だけど、勉強しようと頑張っても、他事が気になって、できなかったんだろう、って。


 ほら、こんなことを言うひと、みなさんの周りにもいませんでした? 試験勉強をしたり、レポートを書いたりしないといけないときに限って、なぜか部屋が散らかっているのが気になり、掃除をはじめてしまうんだ、って。


 そんなふうに、勉強しようとしはじめた途端、他事が強く気になってくることって、ありますよね。Nさんにも、そうしたことが起こっていたのかもしれませんね。


 さっきの引用文中にも、「いじめが深刻になってきて、勉強どころではなくなっていた」とNさんが言っていた旨、書いてありましたよね。「だが、いじめが実際にあったわけではなく、やはり被害妄想によるものだった。幻聴も散発しており、『うぜえ』とか、『死んじまえ』などという同級生の声が聞こえていた」、って。


 勉強しようとして机に向かっていると、同級生たちはボクのことを内心うぜえとか死んじまえとかと思っているのではないかと気になってきて勉強がそっちのけになってしまったのかもしれませんね。


 でも、勉強しようとしているそのところで、自分がそんなことを気にするなんて、Nさんにはまったく思いも寄らないことだったのではないでしょうか。


 いや、いっそ、そのことを裏返しにして、語弊があるかもしれませんけど、こう言い改めてみましょうか。そのときNさんには、自分が同級生たちに内心悪く思われているのではないかと気にしているはずはないという自信があったんだ、って。


 で、その自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。


 問題集を開いて勉強しようとしていると、「うぜえ」とか「死んじまえ」とかという同級生たちの声が聞こえてきて、勉強どころではなくなる、って。


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Nさんのこの事例は全6回でお送りします。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • Part.3(短編NO.35)


   今回

  • part.4(短編NO.36)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


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