*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.34
いまこう推測しましたよ。
- ①Nさんは、ワイシャツの落書き等を、同級生たちからの嫌がらせではないかと疑った。
- ②そんなNさんには、自分が「思い違いをしている」はずはないという自信があった。
なら、そのあとはどうなります? Nさんは当然、そのワイシャツの落書き等を、同級生たちからの嫌がらせに違いないと頭から決めつけることになりませんか。
いまの推測を箇条書きにしてまとめてみますね。
- ①ワイシャツ等の落書きを、同級生たちからの嫌がらせではないかと疑う(とっさに一可能性を思いつく)。
- ②自分が「思い違いをしている」はずはないという自信がある(他の可能性を不当排除する)。
- ③ワイシャツの落書き等を、同級生たちからの嫌がらせに違いないと頭から決めつける(勝手に一つに決めつける)。
これは簡単に言うと、どういうことか。
Nさんは、自分が他人を疑りすぎていることに気づいていなかったのではないか、ということですよ(ほんとうにNさんへの嫌がらせなんかなかったのなら、ね?)。
そして以降、Nさんは、いま見た要領で、いろんな出来事を同級生たちからの嫌がらせと誤って信じ込んでいったのかもしれませんね。実際は単にNさんが同級生たちを疑りすぎているだけだったが、Nさんはそのことに気づかず、いわゆる「いじめ」を同級生たちから受けているのだと思い込むようになっていった、ということなのかもしれませんね。
で、
辛い気持ちが毎日続いたNさんは、死にたくなった。そのため、飛び降り自殺をしようとビルに上ったり、心臓麻痺になれば死ねると思い、多量の日本酒を飲んで冷たい水に浸かったりした。コードで自分の首を絞めようとしたこともあった。母親からみても元気がなかったが、自殺しようと考えていることまでは気がつかなかった。
ということなのかもしれませんね。
学生さんが人間関係を苦に自殺するというニュースをしばしば見聞きしますけど、ひょっとすると、そのなかには、いま想定したような、嫌がらせを受けていると誤解して自殺する事例もあるのかもしれませんね。
2021年8月15日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/8)はこちら。
*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.2)。
- part.1(短編NO.33)
- Part.3(短編NO.35)
- Part.4(短編NO.36)
- Part.5(短編NO.37)
- Part.6(短編NO.38)
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。