(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「監視されている」「数字が合図を送ってくる」「盗聴されている」を理解する(統合失調症理解#4)(1/8)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.11

目次
・ある男性の3つの訴え
・監視されている(ⅰ)
・監視されている(ⅱ)
・数字が合図を送ってくる
・盗聴されている(ⅰ)
・盗聴されている(ⅱ)
・盗聴されている(ⅲ)
・(精神)医学は人間差別の体系である


◆ある男性の3つの訴え

 この世に異常なひとなどただのひとりも存在し得ないということを以前、論理的に証明しましたよね。


(参考:いちおうそのときの記事を挙げておきますね。)


 そしてそれは、「理解不可能なひとなど、ただのひとりも存在し得ない、ということを意味するとのことでしたよね。


(参考:そのことを確認したときの記事もいちおう挙げておきますよ。)


 だけど、医学は一部のひとたちを異常と判定し、「理解不可能」と決めつけて、差別してきました。


 たとえば、あるひとたちのことを統合失調症と診断し、つぎのように「永久に解くことのできぬ謎」だとか、「了解不能」だとかと言ってきましたね?

 

かつてクルト・コレは、精神分裂病〔引用者注:当時、統合失調症はそう呼ばれていました〕を「デルフォイの神託」にたとえた。私にとっても、分裂病人間の知恵をもってしては永久に解くことのできぬ謎であるような気がする。(略)私たちが生を生として肯定する立場を捨てることができない以上、私たちは分裂病という事態異常」で悲しむべきこととみなす「正常人」の立場をも捨てられないのではないだろうか(木村敏『異常の構造』講談社現代新書、1973年、p.182、ただしゴシック化は引用者による)。

異常の構造 (講談社現代新書)

異常の構造 (講談社現代新書)

  • 作者:木村 敏
  • 発売日: 1973/09/20
  • メディア: 新書
 

 

 専門家であっても、彼らの体験を共有することは、しばしば困難である。ただ「了解不能」で済ませてしまうこともある。いや、「了解不能であることがこの病気の特質だとされてきたのである。何という悲劇だろう(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、p.30、ただしゴシック化は引用者による)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

  • 作者:岡田 尊司
  • 発売日: 2010/10/15
  • メディア: 新書
 


 今回は統合失調症と診断され、このように「理解不可能」と決めつけられてきたひとたちのなかから、実際にひとり登場してもらい、そのひとがほんとうは理解可能であることを実地に確認していきますよ。最近ずっとやっているように、ね?


 岡田尊司精神科医が、著書『統合失調症』(PHP新書、2010年)で挙げているつぎの男性(以下、男性、と呼ばせてもらいますね)に登場してもらいますね。みなさん、まずこの男性のことをひとつ活き活きと思い描いてみてくれますか。

「数字が合図を送ってくる」

 初診時、二十三歳の男性。専門学校を卒業後、プログラマーとして働いていたが、残業が多く、体力的にもたないと感じたため、他の会社に転職する。しかし、新しい仕事は営業職に近く、厳しいノルマが課せられ、成績が上がらないと上司から容赦のない叱責が飛んできた。その頃から、次第に眠れなくなると同時に、電車に乗ったり通りを歩いていてもいつも監視されているような感じに襲われた。また、数字が気になって目にする数字に何か意味があり自分に合図を送っているように感じた。自分の部屋に帰っても落ち着かず、「盗聴されている電話を分解したりした。顔つきが別人のように暗くなったことに驚いた、交際中の彼女につき添われて、精神科を受診した。


 不眠や幻聴、監視妄想の症状は、一ヶ月余りで改善したが、「数字が気になる」という症状や意欲低下などがしばらく続いた(前掲書p.49、ただしゴシック化は引用者による)。


 いま、つぎの3つの体験が挙げてありましたね。

  • ア.「電車に乗ったり、通りを歩いていても、いつも監視されているような感じに襲われた」
  • イ.「数字が気になって、目にする数字に何か意味があり、自分に合図を送っているように感じた」
  • ウ.「自分の部屋に帰っても落ち着かず、『盗聴されている』と、電話を分解したりした」


 いずれも、統合失調症の症状と診断され、「理解不可能」とされるものばかりでしたね。この3つをこれから順に見ていきます。果して、(精神)医学の見立てに反し、ほんとうに「理解可能」と言えるのか、ひとつずつ確認していきますね。


 ところで、先の引用文の最後に「幻聴」があった旨、記してありましたね? その「幻聴」というのはこの3つのうちのどれに当たるのでしょうね? ア(監視されている)かウ(盗聴されている)のどちらかでしょうか。それとも、その両方でしょうか。あるいは、引用文中にはその詳細は挙げられていなかったのでしょうか。ちょっとはっきりしませんね? 以下の考察では一応、アとウそれぞれにつき、幻聴に当たらない場合と、当たる場合とを想定していくことにしますよ。


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前回の短編(短編NO.10)はこちら。


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