(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「わたしはエスパーだ」「頭のなかを監視されている」を理解する(統合失調症理解#3)(5/10)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.10


◆場面2‐Ⅲ

 では、ここから、3つ目の想像に移りますね


 朝礼のスピーチがAさんには退屈でならなかったと先ほど同様仮定して話を進めますよ。Aさんは「スピーチ、早く終わればいいのになあ」と考えていたとしますね(あくまでも仮定ですよ)。もちろんAさんはそうした考えをそぶりには出さなかった。真面目な態度でスピーチを聴いていた。ところが急に、スピーチをしているひとにスピーチが早く終わることを願うその(Aさん自身、不謹慎と思われる?)Aさんの内心を見抜かれているような気がしてきて、不安になった


 けれどもそのいっぽうでAさんには自信があった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信が。で、その自信に合うよう、Aさんは現実をこう解した。


 スピーチをしているひとに、「スピーチ、早く終わればいいのになあ」と思っているのを言い当てられ、ビックリした、って。


 いまこう推測しましたよ。じっくりふり返ってみますね。


 スピーチを早く終わってほしいと思っているのを、スピーチをしているひとに見抜かれているような気が不意にしてきて、Aさんは不安になった(現実)。ところが、その反面、Aさんには「自信」があった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信が。そのように「現実自信とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつのうちにいずれかであるように俺には思われます。

  • ア.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • イ.自信に合うよう現実のほうを修正する


 で、このとき、Aさんは後者イの「自信に合うよう、現実のほうを修正する」手をとった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といったその自信に合うよう、現実をこう解した。


 スピーチをしているひとに、「スピーチ、早く終わればいいのになあ」と思っているのを言い当てられ、ビックリした、って。


 箇条書きにしてまとめるとこうなります。

  • ①スピーチを早く終わってほしいと思っているのを、スピーチをしているひとに見抜かれていような気がしてきて、不安になる(現実
  • ②「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信がある(現実と背反している自信
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「スピーチ、早く終わればいいのになあと思っているのを、スピーチをしているひとに言い当てられ、ビックリした」(現実修正解釈


 ところがAさんにはさらにこういう自信もあった。わたしの考えをひとが見抜き得たはずはないといった自信が。で、そんな自信があればこそ、Aさんには、自分の考えをひとに言い当てられたそのことが不思議に思われてならなかった。


 そして以後もこれとおなじことが何度かつづいたが、とうとうあるとき、以前からずっと首を傾げていたAさんは不意に「なるほど、自分にはテレパシーがあって、それで、見抜かれるはずのない内心が他人にモレ伝わってしまうのか!」と思い至ったのではないかというところから後は、先(場面2‐Ⅰ)に推測しましたとおりです。


2020年3月5日に誤りを一点訂正しました(「スピーチをしているひと」と書くべきところを、「まわりのひとたち」と書いてしまっていました)。また2020年4月18日に、内容はそのままに文字を一部追加しました。


ひとつまえの記事(4/10)はこちら。


前回の短編(短編NO.9)はこちら。


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