(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

統合失調症の「わたしはエスパーだ」「頭のなかを監視されている」を理解する(4/10)【統合失調症理解#3】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.10


◆場面2‐Ⅱ(言い当てられたと思い込んだ)

 つぎは、ふたつ目の想像(Ⅱ)を見てみますよ。


 たとえば、朝礼で誰かが退屈なスピーチをしていて、最後にその話をこんなふうに閉めたと仮定してみてくれませんか。「早くスピーチを終えてほしいと思っているひともいるようなので、これで話を終わります」。そのひとは当てずっぽうでそう言っただけだった。ところがそのとき「スピーチ、早く終わってくれたらなあ」と願っていたAさんは、自分の内心を言い当てられたと思い込んだ」(現実)。


 しかしそのときAさんには自信があった。ひとがわたしの内心を見抜くことは不可能であるはずだという自信が(この自信については先ほど詳しく説明しました)。で、そんな自信があったAさんには、自分の内心を言い当てられたそのことが不思議に思われてならなかった。


 そして、このように、自分の内心をひとに言い当てられたと「思い込む」ことが何度かつづいていたあるとき、以前からずっと首を傾げていたAさんはふと思い至った。


  あ、そうか、わかったぞ、自分にはテレパシーがあるんだ。なるほど、それで、見抜かれるはずのない自分の内心が、他人にモレ伝わってしまうのか!


 箇条書きにしてまとめると、こういうことです。

  • ①自分の内心を言い当てられたと「思い込む」(現実)。
  • ②ひとがわたしの内心を見抜くことは不可能であるはずだという自信がある(自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解する。「自分にはテレパシーがあって、それで、見抜かれるはずのない自分の内心が、他人にモレ伝わってしまうんだ」(自信に合うよう現実を解釈する


 と同時にAさんは、自分がエスパーであるそのこともまた従業員たちに見抜かれ、噂されているのではないかと気にするようになった(現実)のかもしれないというところ以降は、さっき考察したとおりです。





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2021年8月9,10日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/10)はこちら。


*前回の短編(短編NO.9)はこちら。


*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。