(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「わたしはエスパーだ」「頭のなかを監視されている」を理解する(統合失調症理解#3)(7/10)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.10


◆場面4

 こうして急速に居場所がなくなってきたAさんはついに家のなかでも、従業員たちのことを気にするまでになります。

 居たたまれなくなり「この人たちから逃げたい」と思いましたが、今度は家に帰った後もその人たちが家のなかをのぞき、部屋の様子や家族のことを噂するのです。


 どこに行っても、寝ているとき以外はつねに頭の中を監視され、息さえも自由に吸えない状況にまで追い込まれていきました。私はさんざん悩んだあげく「早くこの人たちに幸せになってほしい」「私をいじめることに夢中になっていないで幸せになって」と祈りました。


 Aさんはいま言っていましたね。「家に帰った後もその人たちが家のなかをのぞき、部屋の様子や家族のことを噂するのです」って。これは、Aさんが家に帰っても部屋のなかの様子や家族のことすらそのひとたちに(なぜか)知られていて噂されているのではないかと心配するまでになった現実)ということを意味するのではないでしょうか。でも、Aさんにはやはり自信があった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信が。で、Aさんはその自信に合うよう、現実をこう解した。


 家に帰ったあとも、従業員たちがわたしの部屋の様子や家族のことを、のぞきこんで噂しているのが、わたしの耳に入ってくる、って。

  • ①家に帰っても、部屋のなかの様子や家族のことすら従業員たちに(なぜか)知られていて、噂されているのではないかと心配になる(現実)。
  • ②「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「家に帰ったあとも、従業員たちがわたしの部屋の様子や家族のことを、のぞきこんで噂しているのが、わたしの耳に入ってくる」(現実修正解釈


 職場ではトイレのなかでさえ息がつけず、とうとう家のなかもAさんの居場所ではなくなった。Aさんはこう訴えていましたね。「どこに行っても、寝ているとき以外はつねに頭の中を監視され、息さえも自由に吸えない状況にまで追い込まれていきました」って。これは、Aさんが起きているあいだ中ずっと自分の考えを従業員たちに見抜かれ、嗤われたり噂されたりしているのではないかと心配するまでに追い詰められていった(現実)ということを意味するのではないでしょうか。だけどAさんには依然、自信があった。「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信が。で、Aさんはその自信に合うよう、現実をこう解した。


 従業員たちに、寝ているとき以外はずっと頭のなかを覗き込まれて(嗤われたり噂されているして)いる、って。

  • ①起きているあいだ中ずっと、自分の考えを従業員たちに見抜かれ、嗤われたり噂されたりしているのではないかと心配している(現実)。
  • ②「ひとにどう思われているのかを自分が気にしているはずはない」といった自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「従業員たちに、寝ているとき以外はずっと頭のなかを覗き込まれ(嗤われたり噂されたりし)ている」(現実修正解釈


2020年4月18日に、内容はそのままに文字を一部追加しました。


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