*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.15
◆場面6:仲間幻聴
[パターン③]仲間幻聴
デイケアのなかにいると、すれ違いざまに意味深なことを言ってきたり、まわりでひそひそと悪口の噂をしてくる。
対処方法▶幻聴の送り主に向かって爆発する。
結果▶相手がキレて怒鳴り返してくる(浦河べてるの家『べてるの家の「当事者研究」』医学書院、2005年、p.122、ただしゴシック化は引用者による)。
Cさんは、デイケアにいるとき、しばしば気になるのかもしれませんね。デイケアの仲間たちに内心悪く思われているのではないか、って(現実)。道ですれ違うとき、下校途中の高校生たちに内心悪く思われているのではないかと気になるのとおなじように、ね? あるいは中学生の頃、久しぶりに登校した学校の教室のなかで、同級生たちに内心、「早く死んじゃえばいいのに」と思われているのではないかと気になったみたいに、ね?
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Cさんの、同級生たちに内心「早く死んじゃえばいいのに」と思われているのではないかと気になった場面はこちら。
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ところがCさんにしてみると、自分がデイケアのそうした場面で、仲間たちに内心悪く思われているのではないかと気にしたりするはずはなかった。いや、いっそ、Cさんのその見立ても、少々語弊があるかもしれないことを怖れながらも、こう言い換えてみることにしましょうか。Cさんには、気にしているはずはないという自信があるんだ、って。自分が、仲間たちに内心悪く思われているのではないかと気にしているはずはない、という自信が、って。
このように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、やはり、つぎのふたつのうちのいずれかではないかと、俺には思われてなりません。
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A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
B.その背反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。
で、デイケアのこの場面でもCさんは後者Bの「現実のほうを修正する」手をとる。すなわち、自分が気にしているはずはないとするその自信に合うよう、現実をこう解する。
デイケアの仲間がすれ違いざま意味深なことを言ってくるのが聞こえたり、まわりでひそひそとボクの悪口の噂をしているのが耳に入ってきたりする、って。
まとめます。
- ①デイケアの仲間たちに内心悪く思われているのではないかと気になる(現実)
- ②そうしたことを気にしているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)
- ③その自信に合うよう、現実をこう解する。「デイケアの仲間たちがすれ違いざま意味深なことを言ってくるのが聞こえたり、まわりでひそひそとボクの悪口の噂をしているのが耳に入ってきたりする」(現実修正解釈)
2021年9月10日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/6)はこちら。
*このCさんシリーズはpart.1,2,3でお届けしています(今回はpart.3)。
- part.1(短編NO.14)
- part.2(短編NO.15)
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。
