*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.60
◆異常を身体のなかの一点のせいにすると、その一点に正常になることを妨げられていることになる
さて、そんな差別をする医学は、身体に起こる出来事を、身体のなかの一点のせいにします。
医学は、ひとが歩けば、その動きを脳のなかのどこか一点のせいにし、話せば、また、それも脳のなかの何か一点のせいにするといったことをしてきました(脳の機能局在という言葉をしばしば目や耳にします)。
その他には、身体に起こる出来事を、医学が、ガンとか、ウィルスとか、細菌とか、アレルゲンとか、変異遺伝子とか、脳内物質の欠乏や過剰とかといった一点のせいにしているのを、みなさん、よく見聞きもしてきましたよね。
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たとえば、認知症についても、医学が、身体(脳)のなかのたった一点のせいにしようとしているのが、よくわかりますね。或る一点のせいで起こっているということにするための、物質機序(物語)が作り上げられていくのも、見てとれます。
ちなみに何度も言うように、出来事を一点のせいにすることができた試しは、物理学上、一度もないはずです(一点のせいにできるなら、物理学なんていらなかったでしょうね)。
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医学はひとを異常と判定したあと、その異常についても、正常と判定したとき同様、このように、身体のなかの一点のせいにします。
するとどうなるか。
ひとを異常と判定するというのは、こういうことだと、ちょうどいま再確認しました。そのひとの実際のありようを、こちらの頭のなかにある「ひととはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していないと見、その合致していないことをもって、そのひとを、問題有りと考えることだ、って。
したがって、そのひとを異常と判定し、その異常を、そのひとの身体のなかの一点のせいにすれば、そのひとが、当のイメージに合致するありようになっていないのを、その一点のせいにしていることになりますね。
となると、その一点は、どういうものであることになるか?
そのひとが、当のイメージに合致するありようになるのを妨げていることになりますね?
そして、そのひとは反対に、その一点によって、妨げられていることになりますね。当のイメージに合致するありようになるのを、ね?
いま言ったことを簡単にまとめてみますよ。
ひとを異常と判定し、その異常を、そのひとの身体のなかの一点のせいにすると、
- その一点は、そのひとが当のイメージに合致するありようになるのを、妨げていることになり、
- そのひとは、当のイメージに合致するありようになるのを、その一点によって妨げられている、ことになる。
2023年11月22日に文章を一部修正しました(内容は変わっていません)。
*前回の短編(短編NO.58)はこちら。
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。