*短編集「統合失調症と精神医学と差別」の短編NO.42
医学はいッつも、治療(治療薬や手術等)の副作用はたいしたことがないと言いますよね。
でも、みなさん、ほんとうにそうだと思います?
たしかに、これといった副作用をこうむらない患者さんもたくさんいるに違いありませんね。けど、副作用に苦しんでいる多くのひとたちの声もまた聞こえてはきませんか。
実は副作用はしばしば「たいしたことがある」のに、医学が勝手にそれらを「たいしたことがない」と侮ってきただけということはないでしょうか。
実際、副作用などまったく無いと長いあいだ謳われていた、安全なはずの施術(投薬治療や手術)が、重篤な副作用のために急に禁止になったようなことって、これまで度々ありましたよね(あのロボトミー手術ですら、当時は副作用は無いと喧伝されていませんでしたか)?
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参考記事
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最近この短編集ではずっと、統合失調症と診断されたひとたちの実例を見させてもらっています。そのひとたちに使われる薬についても、副作用は全然たいしたことが無いと当たり前のように言われてきましたよね?
たとえば岩波明精神科医は、向精神薬(同氏の説明によると向精神薬とは「ヒトの精神的な機能に作用する薬物」のことであるそうです*1)の副作用についてつぎのように語っています。
どのようクスリにも、副作用のリスクはある。過剰なほど薬物に依存的な人がいる一方で、理由なく、服薬に対して嫌悪感を抱いている人もみかける。そういう人たちの一部は、漢方薬は安全であると信奉しているらしい。
しかしこれは誤りである。(略)
薬には、必ず副作用がある。他の薬物と比較すると、実は向精神薬の副作用は軽微なことが多い。向精神薬を長期間、数年から数十年持続的に服用しても、ほとんど問題のない場合が大部分である。
しかしながら、そうは言ってもなかなか安心して薬を服用できないという人も多いことであろう。実際、複数の病院を受診している場合などでは、多種多様のクスリを服用していることも珍しくない。相互作用は問題ないと薬剤師から説明を受けても、不安な気持ちになるのは自然である。
もちろん、不要なクスリは服用しない方がいい。しかし特に急性期の精神疾患においては、クスリを服用して副作用がみられるリスクよりも、服用しないで症状が悪化するデメリットがはるかに大きい(岩波明『精神疾患』角川ソフィア文庫、pp.224-225、ただしゴシック化は引用者による)。
「薬には、必ず副作用がある」とのことでしたね。だけど、「向精神薬の副作用は軽微なことが多い」とも書いてありました。「数年から数十年持続的に服用しても、ほとんど問題のない場合が大部分である」って。
でも、ほんとうに副作用は「問題のない場合が大部分」なのでしょうか。先ほども言いましたように、実は、問題のある場合がしばしばあるのに、(精神)医学がそれらを勝手に「たいしたことがない」と決めつけ、とりあってこなかっただけということはないでしょうか。
今回はそのことについて考えます。前置きが長くなりましたけれども。
*前回の短編(短編NO.41)はこちら。
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。
*1:後掲書p.222