(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

ひょっとすると(精神)医学が勝手に副作用を「たいしたことがない」と侮ってきただけかもしれないという暗い予感(2/2)【医学は副作用を侮ってきた? part.1】

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」の短編NO.42


 では、つぎの文章を読ませてもらうところから始めますね。俺が手元にもっている岡田尊司精神科医著『統合失調症』(PHP新書、2010年)のなかにある一節です。

 第二章で、幻覚妄想に効果がある薬として登場したクロルプロマジンは、統合失調症の治療を大きく変えたことを述べた〔引用者注:クロルプロマジンが登場したのは1950年代前半と言われているようです〕。その後、クロルプロマジンの効果は、ドーパミンD2受容体を遮断する作用によることが判明し、統合失調症ドーパミンの過剰によって起きるというドーパミン仮説が提起された。ドーパミンD2受容体を遮断する効果の強い薬剤が次々と作られた。その中で、もっとも治療効果を認められた薬がハロペリドールで、クロルプロマジンとともに今日も使われている。


 ただ、これらの薬は、手の震えや前屈み歩行といったパーキンソン病に似た症状をはじめ、口渇や便秘、排尿障害、眠気、疲れやすさなどの副作用を生じやすく、症状がよくなっても、日常生活での支障が大きかったのである。副作用を抑えるために副作用止めの薬をのみまたその副作用が生じるということも多かった


 こうした状況が三十年以上も続いた〔引用者注:1950年代前半から30年以上ということになるでしょうか〕のである(岡田尊司統合失調症PHP新書、p.171、2010年)。


「幻覚妄想に効果がある薬」として1950年代から30年以上使われていたクロルプロマジンハロペリドールという抗精神病薬について、最後のほうにこう記してありました。


「これらの薬は、手の震えや前屈み歩行といったパーキンソン病に似た症状をはじめ、口渇や便秘、排尿障害、眠気、疲れやすさなどの副作用が生じやすく(略)日常生活での支障が大きかった」って。


 さらにはその「副作用を抑えるために副作用止めの薬をのみ、またその副作用が生じるということも多かった」って。


 それらの表現から、副作用(苦しさ)をこうむるのが、決して稀ではなかったらしいことが窺えませんか? またその副作用の強さ自体、しばしばたいしたものだったかもしれない可能性も感じられはしませんでしたか?






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次回は翌週6月13日21:00頃にお目にかかります。


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