*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第6回
◆出来事を一点のせいにするとは
現に、おなじ科学でも物理学や化学は、医学とちがって、出来事を一点のせいにしたりなんかしません、ね?
いや、でも待ってくださいよ、物理学や化学は出来事を一点のせいにしたりなんかしないってことを確認するまえにまず、出来事を一点のせいにするっていうのがどういう論理か、少し確認しておくことにしましょうか、ね?
出来事を一点のせいにするっていうのは、人間には馴染みの論理ですよね。雨が降りますね。その雨降りを、その場に居合わせた誰かひとりのせいにして雨女とか雨男とよび、糾弾する。「アイツがいなければ、晴れてたのにな〜」「もうアイツよぶのよそうぜ」「だな、また雨降っちゃうからな」
これなんか、雨降りという出来事を、ひとりのひと、つまり一点のせいにしていますよね?
挙げた例、極端すぎますかね? なら、こんな例はどうです? 最近の若者の言動が気にくわない。そこでそのことを教育という一点のせいにし、さらに教育がそんなふうなのを今度は教師のせいにして、ダメ教師を排除せよって叫ぶ。
ね、これも出来事を一点のせいにしていますよね? それも2回も?
出来事を一点のせいにするというのは、
- ①出来事が好ましい場合には、すべてをその一点のおかげとし、その一点を過大評価すること、
- ②出来事が好ましくない場合には、すべてをその一点におっかぶせ、その一点をとり除きさえすればいいとすること、
と言えるんじゃないですかね?
ほら、医学はよく、人間の平均寿命がここ数十年のあいだに劇的に伸びたのを、すべて医療一点のおかげとし、医療を過大評価するじゃないですか(いや、そんなことをするのは日本の科学者だけかもしれないですね)。それって前者①の論理そのものですよね? あと、感染症なるものが減ってきたのを、すべてワクチンのおかげにするとか、ね? どう考えたってものの見方が極端すぎるっていうのに、ね?
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ほかにぱっと出てくるのはガン治療かな。これなんか、後者②そのものじゃないですか。かつて医学は、複数のひとたちが苦しんで死んでいったのを、そのひとたちの身体のなかに見つかったガン一点のせいにした。そして、ガンという一点を身体のなかからとり除きさえすればいいことにし、臓器ごとごっそり摘出したり(1881年にはじめて胃がんの手術をしたビルロートなんか有名みたいですね)、非常な苦しみをこうむる抗がん剤投与をドシドシしたりしてきたじゃないですか、ね?
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