(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

統合失調症の「予備校に入学早々、他の学生に嫌がらせをされたとのことで、通学しなくなる」を理解する(5/9)【統合失調症理解#16-vol.4】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.36


◆引け目を感じる(案2)

 あるいは、予備校で他の生徒たちに嫌がらせをされたというこのことは、ひょっとすると、こういうことだったのもしれないと俺は考えないでもありませんよ。


 予備校に行っても、2浪生であることなどが意識され、「自分みたいなバカ居ていい場所ではないと引け目を感じ、居心地が悪かったということだったのかもしれない、って。


 でも、Nさんにしてみれば、自分がそこでそんな「引け目」を感じるはずはなかった。


 いや、いっそ、Nさんのその見立てもこれまでどおり、少々語弊があるかもしれませんけど、こう言い直してみることにしましょうか。そのときNさんには、自分が引け目を感じているはずはないという自信があったんだ、って。


 で、その自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。


 他の予備校生たちが「このバカ」「うぜえ(ここはお前の居場所では無い)」と言ってくるのが、聞こえる、って。


 嫌がらせをされている、って。





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2021年8月15日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/9)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.3(短編NO.35)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「予備校に入学早々、他の学生に嫌がらせをされたとのことで、通学しなくなる」を理解する(4/9)【統合失調症理解#16-vol.4】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.36


 いま、こう推測しましたよ。

  • ①Nさんは、他の生徒たちに嫌がらせをされているのではないかと疑った
  • ②そのNさんには、自分が思い違いをしているはずはないという自信があった


 なら、そのつづきはどうなります? Nさんは当然、その生徒たちに嫌がらせをされていると頭から完全に信じ込むことになりますね?


 いまの推測を、箇条書きにしてまとめるとこうなります。

  • ①他の生徒たちに嫌がらせをされているのではないかと疑う(とっさに一可能性を思いつく)。
  • ②自分が思い違いをしているはずはないという自信がある(他の可能性を不当に排除する)。
  • ③生徒たちに嫌がらせをされていると頭から完全に信じ込む(勝手に一つに決めつける


 このようにNさんは、自分が他の生徒たちのことを疑りすぎていることに気づいていなかったのかもしれませんね。


 つまり、自分のことがうまく理解できていなかったのかもしれませんね。





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2021年8月15日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/9)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。

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  • part.3(短編NO.35)

  • part.5(短編NO.37)

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統合失調症の「予備校に入学早々、他の学生に嫌がらせをされたとのことで、通学しなくなる」を理解する(3/9)【統合失調症理解#16-vol.4】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.36


◆嫌がらせと決めつける(案1)

 ちょうどいま、浪人1年目の大学受験も失敗に終わったと書いてあるのを見ました。その後Nさんは「二浪目に入りこれまでとは別の予備校に入学した」ということでしたね。「だが他の学生にいやがらせをされたと言ってすぐに登校しなくなった」とのことでしたね。


 今回はこの部分だけをとり挙げますよ。残りは次回以降に回します。


「他の学生にいやがらせをされた」というそのひと言からだけでは、何があったのか、詳しいことはもちろんわかりませんけど、ひょっとすると、そのときNさんの身に、中学生の頃同級生たちに嫌がらせをされていると感じられたのとおなじことが起こっていたのかもしれないと考えることはできますね。引用第1部に、中学生の頃のことについて、こういう記述があったの、みなさん覚えていますか。

 本人の話では、この当時他の生徒から、ワイシャツに落書きされたり、ソースをつけられたり、あるいは机の上に置いたプリントをわざと落とされたりするというようないじめに繰り返しあったという。しかし、「いじめ」に関して事実関係は確認できず、現実の出来事ではなく、本人の被害妄想が始まっていた可能性が大きいと思われる(岩波明精神疾患角川ソフィア文庫、2018年、p.124、2010年)。

精神疾患 (角川ソフィア文庫)

精神疾患 (角川ソフィア文庫)

 


 ほんとうは誰も嫌がらせなどしていないのに、Nさんが誤って嫌がらせをされていると信じ込んだんじゃないかということでしたね。


 つまり、自分がひとを疑りすぎている(だけである)ことにNさんは気づいていなかったのではないか、ということでしたね。

 

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そのときの考察はこちら。

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 それとおなじことが、新たに通いはじめた予備校でも起こったのかもしれないということですよ。


 食堂のテーブルに置いておいた自分のカバンが、食事をとりに行っているあいだに、別の席に移動させられていたとか、トイレから帰ってくると、教室の自分の席のうえに、消しゴムのカスが寄せられていたとか、あるいは自分だけ授業中にプリントが回ってこなかったとかいうようなことが、この予備校で起こったのかもしれませんね。


 で、Nさんは、それを他の生徒たちからの嫌がらせではないかと疑った


 でも、たまたまそういうことが起こっただけという可能性も、もちろんあった。要するに、Nさんが他の生徒たちを疑りすぎているだけという可能性は十分にあった。Nさんは、他の生徒たちに嫌がらせをされていると疑う自分を疑ってみてもよかった


 だけど、Nさんはそうしなかった。


 Nさんにしてみれば、自分がそこで思い違いをしたりするはずはなかったのかもしれませんね。


 いや、いっそ、Nさんのその見立てを、少々語弊があるかもしれませんけど、ここでも、こう言い換えてみることにしましょうか。そのときNさんには、自分が思い違いをしているはずはないという自信があったんだ、って。





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2021年8月15日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/9)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.3(短編NO.35)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


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統合失調症の「予備校に入学早々、他の学生に嫌がらせをされたとのことで、通学しなくなる」を理解する(2/9)【統合失調症理解#16-vol.4】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.36

精神科に入院

 浪人した年の十一月このような生活状況を心配した母親にすすめられてNさんは精神科を受診した。そこで服薬を始めたが精神状態は安定せずに翌年の受験は再び失敗に終わった


 二浪目に入りこれまでとは別の予備校に入学しただが他の学生にいやがらせをされたと言ってすぐに登校しなくなった。Nさんは、死ぬことばかり考えるようになった。飛び降り自殺をしようと思い、ビルの屋上に何度か行ったが、怖くてできなかった。


 幻聴も活発で、からかうような声や嫌がらせの声が絶えず聞こえてきた。女性の顔の幻視を見ることもあった。ゴールデンウィークの直前、Nさんはけじめをつけると言って、突然予備校をやめてしまう。


 五月の下旬からは、Nさんは何もする気がしなくなった。一日中横になっていて、テレビがついていても見る気がしなくなった。本人は、「すべてに無関心になって、空虚な感じがして、何をするのも、食事をするのも、歯を磨くのも、風呂で体を洗うのもめんどうくさい」のだと言う。実際、入浴を介助してもらい、母に身体を洗ってもらったこともあった。


 六月の末になり、本人の状態が比較的落ち着いていたので、両親は以前から計画していた海外旅行に行った。親は旅先から電話を入れたが、本人は一度も電話に出なかった。Nさんは両親の旅行中、不安感、焦燥感が強まり、通院中の病院に何度も電話して、死にたいと訴えたが、きちんと服薬するように指示されただけだった。


 両親の帰国後、不安定な状態はますます強くなった。母親の目の前でビルに上り、飛び降りて死んでしまいたいと訴えることが起きたため、彼は両親につれられ私が勤務していた精神科を受診して入院となった。


 入院直後から抗精神病薬の投与がなされたが、Nさんの状態はすぐには改善しなかった。本人は、「やっぱり辛い、帰りたい」と訴える。翌朝になっても、「辛くて仕方がない。だれも、食事を持ってきてくれない、歯磨きをする場所が遠い」「入院がこんなに辛いとは思わなかった。退院したい」と幼稚な退院要求を繰り返した。


 看護スタッフが説得して入院を続けることになったが、それからも「家に帰りたい」と、ひんぱんに訴えが続いた。「ふらふらと勝手に足が動いて、高い所に上りたくなる」と自殺をにおわせる発言もみられている。


 このような状態であるにもかかわらず、夜間に突然怒りだして、いびきがうるさいと隣の患者の鼻をつまみ、「うるせーんだよ」と大声を出すこともあった。このため、抗精神病薬の投与量を増し、二週間あまりしてようやく以前よりは穏やかに過ごせるようになった。


 それでも急に看護スタッフに対して、些細なきっかけから、「何か不安で死にたくなっちゃった」と訴えることもあれば、「先生、クスリをくれた後、ぼくのことを笑っていたでしょう」「ハエが頭の中で飛び回っている」などと被害妄想や体感幻覚を思わせる発言が続いていた。自宅に退院するまで、Nさんは三か月あまりの入院が必要だった。


 このNさんの例からもわかるように、統合失調症の症状として特徴的であるのが、幻聴と妄想である。


 幻聴は患者の脳の中で起きている症状である。自分の脳内で生成した「声」や「音」である。しかし、幻聴が聞こえている本人は、外部から音声が入力しているという感覚を持っている。つまり、「脳」という自己の内部で起こっている出来事が、自己に所属していると認識できないわけである。


 幻聴について興味深い点は、幻聴の内容がそれほどバラエティに富んだものではないことである。患者の経歴、職業、あるいは国籍さえも関係しないことが大部分で、むしろ画一的というのが適当であろう。Nさんの場合も、典型的な被害妄想に基づく幻聴が出現していた。幻聴に関連する脳の病巣としては、画像研究などから側頭葉の異常が指摘されているが、明確な結論は得られていない(岩波明精神疾患角川ソフィア文庫、2018年、pp.123-130、2010年、ただし冒頭の小見出し以外のゴシック化は引用者による)。

精神疾患 (角川ソフィア文庫)

精神疾患 (角川ソフィア文庫)

 


 では、いま見ましたところを、順を追って頭から詳しく確認していきますね。


 最初にこう書いてありましたよね。「浪人した年の十一月、このような生活状況を心配した母親にすすめられて、Nさんは精神科を受診した。そこで服薬を始めたが精神状態は安定せずに、翌年の受験は再び失敗に終わった」って。


 追い詰められたNさんは、精神科で、統合失調症の診断を下されたということですね。


 ここには何も書いてはありませんけど、察するに、Nさんはその診断に愕然としたのではないでしょうか。前回、Nさんが、人生に挫折する寸前まで追い詰められていることを確認しました。そのうえさらにここでNさんは統合失調症と診断され余計追い詰められたかもしれませんね。


 でも、余計に追い詰められたかもしれないというそのことについて考察するのは、後回しにすることにして、ここは先を急ぎましょう。





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2021年8月15日に文章を一部修正しました。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.3(短編NO.35)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


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統合失調症の「予備校に入学早々、他の学生に嫌がらせをされたとのことで、通学しなくなる」を理解する(1/9)【統合失調症理解#16-vol.4】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.36

目次
・嫌がらせをされたと言って、予備校に行かなくなる
・嫌がらせと決めつける(案1)
・引け目を感じる(案2)
・他の生徒の内心を気にする(案3)
・part.4の締めの言葉


◆嫌がらせをされたと言って、予備校に行かなくなる

 いま現在、「思春期に発症し典型的な経過がみられた統合失調症のケース」*1とされるNさんの事例を見させてもらっていますよね。


 その当事者Nさんが、(精神)医学の見立てに反し、ほんとうは理解可能であることを実地にひとつひとつ確認していますね。


 今回から、引用第3部(引用最終部)に入りますよ。


 前々回とその前の回に見た引用第1部には主に、Nさんの中学生時代のことが書いてありました。いっぽう前回見た引用第2部には、高校生時代と浪人1年目のことが書いてありましたね。受験生であるNさんはまったく勉強が手に着かず追い詰められ人生に挫折する寸前ということでしたね。


 では、そのつづきを見ていきましょう。今回もNさんのつぎの2点に着目します。

  1. どんどん追い詰められていること。
  2. 自分のことがうまく理解できないでいること。


 以下、引用第3部です。ただし、今回見るのは冒頭の2段落のみですよ。





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2021年8月15日に文章を一部修正しました。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.4)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.3(短編NO.35)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

*1:岩波明精神疾患角川ソフィア文庫、2018年、p.122、2010年

統合失調症の「いじめなど無いのに、いじめが深刻で、勉強に集中できない」「同級生や通行人に悪口を言われるのが聞こえる(幻聴)」「女の子のことで頭がいっぱいになる」を理解する(8/8)【統合失調症理解#16-vol.3】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.35


◆paer.3の締めの言葉

 以上、今回は、引用第2部を見てきました。Nさんがかなり追い詰められてきているのがよくわかったのではないでしょうか。慶応大学の最難関学部に入学するつもりである。そのためには勉強しなければならない。ところが、同級生たちに内心悪く思われているのではないかとしきりと気になって、勉強がまったく手につかない。成績も芳しくなく、ついには受験に失敗した。本人にもどうやら落ちこぼれているという実感が出てきたようで、ひととすれ違う際、「社会に自分の居場所なんか無い」と肩身の狭さを感じたり、「自分なんかダメだ」と劣等感を覚えたりするまでになっている、ということでしたね。


 ただし、自分のことがうまく理解できず、自分が肩身の狭さを感じたり、劣等感を覚えたりしていることに、Nさん自身まったく気づいていない、ということでしたけど。


 冒頭で宣言しましたとおり、つぎの3点が確認できましたね。

  1. 完全に勉強が手につかなくなり、成績もかなり悪くなってしまったこと。
  2. 「社会に自分の居場所なんか無い」と感じたり、通りすがりのひとたちに劣等感を覚えたりするまでになってしまったこと。
  3. 自分のことがうまく理解できないでいること。


 さあ、みなさん、どうでした? 今回もまたNさんに、「理解不可能なところはただのひとつも見つからないと思いませんでしたか?


 いや、もちろん、いまNさんのことを完璧に理解し得たと言うつもりはありませんよ。正直なところ、Nさんのことを多々誤ったふうに決めつけてきてしまったのではないかと気が咎め、胃の辺りに激しい膨満感を覚えているくらいですよ。


 でも、さすがに、今回見てきたNさんが「理解可能」だったこと自体は疑えませんよね?


 みなさんのように申し分のない人間理解力をもったひとたちになら、今回のNさんが完璧に理解できるということは、いま十分、明らかになりましたね?


 次回は引用第3部を、引きつづきこの要領で見ていきます。





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2021年8月14日に文章を一部修正しました。


次回は2週間後、2月15日(月)21:00頃にお目にかかります。


*今回の最初の記事(1/8)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.3)。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • part.4(短編NO.36)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。

 

統合失調症の「いじめなど無いのに、いじめが深刻で、勉強に集中できない」「同級生や通行人に悪口を言われるのが聞こえる(幻聴)」「女の子のことで頭がいっぱいになる」を理解する(7/8)【統合失調症理解#16-vol.3】

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.35


◆慶応の最難関学部に合格することが決まっている

 で、そうこうしているうち、受験の時期がやってきて、Nさんは、受験した大学にすべて落ちたということでしたね。そして、4月から予備校に通いはじめたが、「いじめられた嫌なことを思い出したり、受験に失敗したことを後悔したり」して、授業にすら集中できなかったということでした。ほとんど勉強はせず、「自転車で図書館に行ってCDを借り、自宅でテープに録音することを繰り返していた。母親が勉強するようにと咎めても、それをやめようとはしなかった」ということでしたね。


 でも、Nさんは、志望校である慶応大学の最難関学部に合格することが決まっていると言い出したりするということでした。合格圏には全然達していないのに、って。


 そこにNさんの自信の強さが見てとれますね。


 Nさんの、慶応大学の最難関学部に合格することができるはずだという「自信、勉強をまったくしてきていないとか、成績が合格圏からはほど遠いとかといった頑とした「現実にたいしてもびくともしないほど強かったということですよね。


 けど、そうした自信の強さをここまでずっと見てきてません? ここまでNさんが「現実修正解釈」をしていると思われる場面を3つとりあげてきました。


 今回は、そのうちのふたつを見ました。ひとつは、いじめが深刻になってきて勉強が手につかないと訴えている場面、もうひとつは、ひととすれ違う際、悪口が聞こえてくると訴えている場面でした。


 また前回に見たもうひとつの場面では、自室にいるとき、女性の顔のようなものが目のまえに浮かんでくるとNさんは訴えていました。


 それら3場面でNさんは、ちょうどいま言いましたように、「現実修正解釈」をしていたのではないかということでしたよね。その「現実修正解釈」というのは、「現実自信とが背反するに至ったとき、その背反を解消するために、前者の「現実のほうを、後者の「自信に合うよう修正する操作のことでしたね?


 それら3場面でのNさんの自信、「現実にたいしてもびくともしないどころか逆にそれらを曲げるほど強いものだったということですね?





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2021年8月14日に文章を一部修正しました。


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*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.3)。

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  • part.6(短編NO.38)


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