(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

「科学」には身体が機械にしか見えない(3/5)

*「科学」を定義する第5回


◆「身体」の定義

 みなさんにとって身体とは何かということを最初に確認しましょうか。


 みなさん、自分の目のまえに、自分の左手をかざしてみてくれますか。どうですか、その、みなさんの目のまえ数十センチのところには、何がありますか。まず皮膚がありますね。その皮膚の下には、皮下脂肪や筋肉や神経や骨や腱等がありますね。でも、そこに在るのはそんなブツ)だけですか。そうした「物」が占めているのとまったくおなじ場所を、別の何かもまた占めていませんか。


 感覚、もまたそこにありませんか。


 みなさんの目のまえ数十センチメートルのそのところで、「感覚とがおなじ場所を占めていませんか


 いや、占めていますよね?


 みなさんにとって左手とは、そうしておなじ場所を占めている、「感覚とを合わせたもののことではないでしょうか。


 その調子で今度は全身を考えてみてくださいよ。いま、みなさんの頭の頂から下半身の末端まで、「感覚」がひと連なりになっていますね。で、「感覚」がそうして占めている場所を、皮膚や皮下脂肪や筋肉や神経や骨や腱や臓器といった「物」もまた同時に占めていますね? みなさんにとって身体とは、そのようにおなじ場所を占めている、「感覚とを合わせたもののことではないでしょうか。


 現にみなさんはその「感覚」のほうを、「身体の感覚とか「身体感覚と呼びますよね。そのように「感覚」という言葉に、「身体の」とか「身体」という接頭語をつけるというのは、みなさんが「感覚」を上記のように身体の一部と受けとっている証拠、すなわち、身体を、おなじ場所を占めている「物」と「感覚」とを合わせたもののことと受けとっている証拠ではありませんか。


 いま「感覚」のほうを、ひとはふだん「身体の感覚とか「身体」感覚と呼ぶと言いました。では、その前者の言い方にならって、もういっぽうの「のほうは以後、「身体の物(カラダ・ノ・ブツ)」と呼ぶことしますね。


 そして、みなさんにとって身体とはおなじ場所を占めている身体の感覚身体の物とを合わせたもののことである、といったふうにこれから表現していきますね。


 みなさんにとって身体とは何か、いま確認しましたよ。でも科学は身体をみなさんのようにこうして素直に受けとったことはかつて一度もありませんでしたね?


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