*「科学」を定義する第5回
◇「存在のすり替え」と「関係のすり替え」を経たあとの、音、匂い、味
このまえ、「存在のすり替え」と「関係のすり替え」をあんパンをもちいて確認しましたよね。そのふたつのすり替えを経た結果、あんパンは、元素のよせ集まったにすぎないもの(ただし科学にとって元素とは、見ることも触れることもできず、音もしなければ匂いも味もしないもの、です)であることになるとのことでしたね。そして、みなさんが現に見ているあんパンの姿は、みなさんの心のなかにある、「ホンモノのあんパン(元素のよせ集まったにすぎないもの)についての情報」と解されるとのことでしたね。
箇条書きでまとめるとこうですよ。
- 科学は、みなさんが現に見ているあんパンの姿を、みなさんの心のなかにある映像にすぎないことにする。
- みなさんの眼前数十センチメートルのところに実在しているホンモノのあんパンは、元素のよせ集まったにすぎないものということにする。
- みなさんが現に見ているあんパンの姿を、みなさんの心のなかにある、「ホンモノのあんパンについての情報」であることにする。
こうした要領で科学は、みなさんが現に見ているあんパンの姿のみならず、みなさんが体験しているもの一切を、みなさんの心のなかにある像にすぎないことにします(前記1に対応)。みなさんが現に見ている野原の景色も、現に聞いている窓外の物音も、現に嗅いでいるレモンの匂いも、現に味わっている紅茶の味も、現に感じている身体の感覚も、みな、みなさんの心のなかにある像にすぎないことにします。で、みなさんの心の外にホントウに実在しているのは、元素(何度も言いますように科学にとって元素とは、見ることも触れることもできず、音もしなければ匂いも味もしないものです)だけであることにします(前記2に対応)。
- Ⅰ.みなさんが体験しているもの一切を、みなさんの心のなかにある像にすぎないことにする。
- Ⅱ.みなさんの心の外に実在しているのは元素だけであることにする。
実際、科学は音を、みなさんが現に楽しんだり嫌がったりするあの高かったり低かったりする音ではなく、空気の振動(元素の運動)のことと説明しますよね(前記Ⅱ)。みなさんが現に聞いているあの高かったり低かったりする音については、みなさんの心のなかにある(前記Ⅰ)、「空気の振動についての情報」であることにして、ね?
匂いなら、キッチンや花の辺りからするあの甘かったり酸っぱかったりする匂いのことでなく、匂い分子のことであるとし(前記Ⅱ)、みなさんが現に嗅いでいるあの甘かったり酸っぱかったりする匂いについては、みなさんの心のなかにある(前記Ⅰ)、「匂い分子についての情報」としますよね。
味の場合もおなじですね。辛いとか甘いとかといったあの味のことではなく、口のなかに入った食材の味物質のことと科学は説明しますよね(前記Ⅱ)。で、みなさんが現に味わっているあの辛かったり甘かったりする味については、みなさんの心のなかにある(前記Ⅰ)、「味物質について情報」にすぎないとしますね?
- Ⅲ.みなさんが現に聞いている音、嗅いでいる匂い、味わっている味を、みなさんの心のなかにある、「元素についての情報」であることにする。
科学はこれとおなじように身体のことも解します。ちょっと詳しくそのことについていまから見ていきますね。ここから、冒頭で予告しましたように、「身体のすり替え」のほうに話を移していきますよ。
前回(第4回)の記事はこちら。
このシリーズ(全5回)の記事一覧はこちら。