(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「話が途切れ途切れになる」「頭が飛ぶ」「ピコーンときてバリバリする」を理解する(統合失調症理解#15)(2/8)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.30


◆話が途切れ途切れになる

 音楽大学の学生さん(以下、音大生さんと呼ばせてもらいます)の例からはじめますよ。音大生さんは、精神科医への問いかけに途切れ途切れの応答を見せたと言います。

 考えを纏める力が落ちている状態を思考障害と呼ぶ。思考障害があると考えがうまく進んでいかずとぎれとぎれにしか話せなかったり、論理的な道筋に従って話すということが難しい。聞いている者は、とても理解しにくく感じる


 次はそうした一例で、音楽大学の女子学生が語った言葉である。


「もっと本がよみたい。…学校にはしばらく行かないで…家で一〇回だけ弾いて…(そして?)まわりがすごくうるさい。だから…おじさんが、おーそどっくすな本を読みなさい…(おじさんが?)黒人でアンドレ・ワッツというピアニストがいて、その曲を一回弾いて外に出たり、母親がアメリカ人で…カンパネラというピアノを弾いていたわけです。…でもピアノにかぎをしめてしまいました。(だれが閉めたの?)私です。…今、本を置いてきたのです。椅子のところ…」(平井富雄、関谷透『目でみる精神医学』より引用)


 このケースでは、話の言語的な纏まりが緩くなり、連合弛緩を呈している。ただ、一つひとつの言葉は、理解可能であるが、論理的なつながりが緩くなったり、個人的な連想で、言葉が連なっていくため、第三者には、話が飛んでしまったように感じられる。こういう状態のときには、考えが途切れたり(思考途絶という)、何を話していたかわからなくなるということも多い。これらは思考障害によって起こる症状である。さらにひどくなると、言葉がただ羅列されただけの「言葉のサラダ」状態になることもある(岡田尊司統合失調症』2010年、p.102、ただしゴシック化は引用者による)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

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 音大生さんは「まわりがすごくうるさい」と言っていましたね。それは、どういうことだったのでしょうね?


 ひょっとすると、「周囲の物音」をうるさがっていたという可能性も、ないではないのかもしれませんね。「周囲の物音」が気になるあまり、医師への応答が途切れ途切れになっていたということも、ひょっとすると考えられるのかもしれませんね。


 でも、ここではそういうことではないと仮定して話を進めていくことにしますよ。


 音大生さんのこのような途切れ途切れの応答にみなさん、心当たりありませんか。読書中やゲーム中に話しかけられ、そのような上の空の応答をとったこと、みなさん、これまでにありませんか。もしくは、何かに夢中になっているとか、悩んでいるとかしているひとに話しかけたとき、そうした途切れ途切れの応答をされたという経験、ありませんか。


 いや、ありますよね? 


 音大生さんはそのとき、自分のいわゆる心の声に気をとられていたのかもしれませんね。自分の「心の声」に気をとられるあまり、精神科医への応答が、いま見てもらったように、途切れ途切れになっていたのかもしれませんね。


 つまり、音大生さんは「まわりのひとたちに、たとえば、「あの子、学校に行ってないわね、何してるのかしら」とか「みんなとおなじように振る舞わないなんて、あの子、おかしいんじゃないの?」とかいったように思われているのではないかと気になって仕方がなかったのかもしれませんね。「まわり」のひとたちにどう思われているか、しきりと気になってどうしようもなかったのかもしれませんね。


 ところが、医師の問診を受けているそんなところで自分がそうしたことをしきりと気にするなんて、音大生さんには、まったく思いも寄らないことだった。


 いや、いっそ、そのことを裏返しにして、語弊があるかもしれませんけど、こう言い換えてしまいましょうか。そのとき音大生さんには、自分がまわりのひとたちにどう思われているかを気にしているはずはないという自信があったんだ、って。


 で、音大生さんは、その自信に合うよう、現実をこう解した、ということなのかもしれませんね。


「まわり」のひとたちがしきりに、「あの子、学校に行ってないわね、何してるのかしら」とか「みんなとおなじように振る舞わないなんて、あの子、おかしいんじゃないの?」とか言っているのが耳に入ってきて、「うるさい」、って。


「まわりがすごくうるさい」、って。


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