*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.63
◆「テレビのニュースでアナウンサーがわたしの噂話をしている」
その記事のなかに、こう書かれている部分がありました。以後、その部分について考察していきます。
テレビのニュースでアナウンサーが自分のことを話していると思ったり、外出先で周囲から監視されていると思い込んだり、電車で座っている隣の人の貧乏ゆすりが自分への暗号だと受け止めたりした。周囲のすべてが敵に思えて不安に感じる一方、自身の思考と外の出来事がリンクする感覚は「奇跡の連続だった」という。のちにこの症状が、「統合失調症」という病気であると診断された。
(精神)医学に、統合失調症による「妄想」(異常な発想)と判定されたそれら発想を、箇条書きにしてみるとこうなります。
- ①テレビのニュースでアナウンサーが自分のことを話していると思う
- ②外出先で周囲に監視されていると思い込む
- ③電車で隣に座っていた人の貧乏ゆすりを自分への暗号だと受けとる
- ④周囲のすべてが敵に思える
- ⑤自身の思考と、外の出来事がリンクする感覚がし、奇跡の連続と思われた
この①から⑤までの発想を、①から順に見ていきます。
まず①の「テレビがわたしのことを話している」という発想ですけれども、それは、その記事に転載されている、当該女性の描いたマンガのなかでも触れられています。
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そのマンガ部分はこちら。
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また、そのマンガ本の題名『今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる ~統合失調症の私から世界はこう見えた~』から、その女性が言う「テレビでアナウンサーがわたしのことを話している」は、「テレビでアナウンサーがわたしの噂話をしている」と言い換えられるものと推測できます。
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その方の御本はこちらです。
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では、そう言い換えられるのだとして、その「テレビでアナウンサーがわたしの噂話をしている」をみなさんはどのようにして理解しようとするか?
俺には、みなさんならこんなふうに頭をひねるのではないかという気がします。
みなさんはまずこう自分に問いかける。自分なら、テレビでアナウンサーが話しているのを聞いて、何を思い、何を感じることがあるか。
そうだ、ひょっとすると みなさんはそう答える ボクは時々、テレビを見たり、ラジオを聞いたりしている際、劣等感を覚えていることがあるかもしれない。アナウンサーをまえに、自分の至らない点や失敗を痛感させられて、恥ずかしい思いをしたり、腹を立てたりして、脂汗をかいているときがあるかもしれない。
当該女性も、アナウンサーが話しているのを耳にし、ボクとおなじな感じ方をした、ということはないか。
しかしみなさんはそこで、こう首をひねらざるを得ません。
でも、仮にそうだとしても、どうしてそれが、「アナウンサーに自分の噂話をされている」ということになるのか?
そして、しばらくのあいだ、腕組みをしながら斜め上をにらみつけているうち、みなさんは不意に、この短編集でかつて俺と一緒に考察した、実例をいくつか思い出します。
そのなかから、ひとつだけあげて見てみましょうか?
*前回の記事(短編NO.62)はこちら。
*このこのシリーズ(全64短編)の記事一覧はこちら。