◆引き換えにするものの大きさ(健康のありがたみを知っているものにはわかる)
いまこう指摘しました。当該抗がん剤治療によって生存期間が6ヶ月伸びるというが、それはこの場合、苦しい思いをする期間であって、苦しい思いをする期間がそのように余分に手に入ることは、得をすることに当たるのかどうか怪しい気がする、って。
でも、ここからは、そうした期間が手に入ることを純然たる得と仮定して話を進めていきますよ。
ただし、得であると仮定しても、それは「ニガイ得」とでも言われなければならないでしょうけれどもね。
さて、当該抗がん剤治療が何をもたらすか、もう一度考えてみてくれますか。いま言いましたように、それは、苦しい思いをする期間6ヶ月(寿命の6ヶ月延長)が手に入るという「ニガイ得」をもたらします。けど、そうした「ニガイ得」をもたらすために、引き換えを要求しますよね。
何を引き換えに要求します?
当該抗がん剤治療を受けると、どうなりますか? 受けはじめるとすぐ、もしくはしばらくしてから、「当該治療を受けていなければ、こんなに苦しい思いはしないで済んだのに」という言い方の当てはまる日がはじまりますね。それは「治療を受け、かえって苦しくなった」日、ですね。で、そうした日が、つづいていきますね。最悪の場合、当該治療を受けなければやってくるだろうと当初宣告されていた、余命尽きる日まで(6ヶ月間)、そうした「治療を受け、かえって苦しくなった」日はつづきますね。
では、そのように「治療を受け、かえって苦しくなった」というのは何を意味しますか?
再度思い返してみてくださいよ。ふだんみなさんが、やれ健康だ、やれ病気だとしきりに言うことで争点にするのは、「苦しくないか、苦しいか」でしたよね。みなさんにとって、治るとは、「苦しまないで居てられるようになること」でしたね。
「治療を受け、かえって苦しくなった」というのは、治療を受け「損をしている」ということを意味するのではありませんか。
となると、こうなります。
当該抗がん剤治療をはじめるとすぐ、もしくはしばらくしてから、「治療を受け、かえって苦しくなった」、「損をしている」日がはじまる、って。
で、そうした日がつづいていく、って。
損がそうして毎日毎日積み重なっていく、って。
損の残高がそうして一日一日、増えていくんだ、って。
最悪の場合、当該治療を受けなければやってくるだろうと当初宣告されていた、寿命尽きる日まで、その損の積み重なりはつづくんだ(6ヶ月間)、って。
いや、たしかにひょっとするとそのまえに、そのように「損をしている」日も終わりを告げ、「得をしている」日に転じるかもしれませんよ。つまり、あるときから急に、「当該治療を受けていなければ、もっと苦しんでいたはずだ」と言えるようになるかもしれませんね? でも、やはり「損をしている」日はそれなりに長くつづくでしょうし、最悪の場合、いま言いましたように、当該治療を受けなければやってくるだろうと当初宣告されていた、寿命尽きる日まで、ずっと「損をしている」日がつづく可能性は十分ありますね(抗がん剤治療の副作用の尋常ならざる強さを考えたら、ね)。
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ミュージシャンの桑マンこと、桑野信義さんがその副作用の、想像を超える強さについて語っています。
- 最終アクセス:2022年8月19日19:28
- URL:https://president.jp/articles/-/58169?utm_source=pocket_mylist
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*今回の最初の記事(1/8)はこちら。