*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第1回
目次
・医学だけが無視するこの世の根本原理
・大木の姿をつぶさに観察する
・身体とは
◆医学だけが無視するこの世の根本原理
「なんぴとも無視することのできないこの世の根本原理は何か」と問われたら、俺なら、照れながらおずおずと、こう答えるでしょうね。「この世の最小単位は状況である」というのがその根本原理なんだ、って。すなわち、状況・最小単位説こそ、そうした根本原理の名にふさわしいんだ、って。
状況・最小単位説って名前は俺が勝手につけましたよ。いつものことです。
えっ、この世の根本原理がドウのコウのなんてきょうび誰も言わない? そんなこと言う人間は中二病? ねえ、もうやめましょうよ、やれ中二病だなんだと言ってひとを嗤うのは。口先とんがらがして「中二病だ中二病だw」と誰かを嘲笑っているひとが、ひとまえではアゴを撫でまわしながら「みんな違って、みんなイイ」なんて、感に堪えないような声出すの、聞きたくないですよ、俺。
なんの話してましたっけ? ああ、なんぴとも無視することのできないこの世の根本原理について話してましたね。状況・最小単位説こそ、この世の根本原理なんだって俺さっき小さな声で恥ずかしそうに言いました。これからちょっと汚名返上させてもらえません? だって、このままじゃあ、「状況・最小単位説ってナニ? アイツまた変なこと言ってる。笑」で終わりじゃないですか。いま何か変なことを言っているように聞こえるかもしれないけど、超大事なことに触れてるんだってわかってほしいな、と。
ねえ、ちょっと聞いてみてくださいよ。
手短にお話ししますし、お願いしますよ。
俺が思うに、なんぴとも無視できないほど重要であるにもかかわらず、この状況・最小単位説にもとづこうとしてこなかった学問がひとつあります。
医学ですよ。
おなじ科学でも、物理学や化学はこの原理にもとづこうと努力してきたのに、医学だけ無視を決め込んできました。その結果、医学は現実にうまくついてこれませんでした。そのことを悟られないようこれまでただヘリクツで誤魔化してきただけで。えっ、また悪口かって? ちがいますよ。俺ほど科学を愛しているヤツはいないですよ。ほんとうに愛しているのでなければ、醜悪な面まで直視することはできないはずだし、いやまあそんなことはどうだっていいや、本題に入りますね。
俺が状況・最小単位説と名づけた、なんぴとも無視することのできないこの世の根本原理をこれから見ていきます。で、最後に、物理学も化学もこの原理にもとづこうと汗水たらしてきたのに医学だけちっとももとづこうと努力してこなかったってことを簡単に確認して、今回は終わりとしましょうか、ね?
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