(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

どんな気象を不当にも異常気象と決めつけるか

*障害という言葉のどこに差別があるか考える第13回


 第1部(現在第2部)ではつぎのことを確認しました。

  1. 正常異常の区別は実は機械に対してつけられないこと、
  2. 当然、正常異常の区別はひとに対してもつけられないこと(そもそも異常なひとはこの世に存在しない)、
  3. にもかかわらず科学はひとを正常と異常に振り分け、両者のひとたちのあいだに不当な差をつける差別をすること。


 いまから、科学に不当にも異常と決めつけられるのが誰なのか明らかにするため、「異常気象」という例を用いて考察を進めていきます。


 何度も申しますように、正常異常の区別は実は機械に対してつけられません。当然、気象に対してもつけられません。異常気象はこの世に存在しません。にもかかわらず気象を正常と異常に振り分ければ、両者の気象のあいだに不当な差をつけ、差別していることになります。


 俺は先ほどうかつにも、どんな気象を異常と決めつけようとしたのでしょうか


 みなさんご想起ください。みなさんは  行き詰まっている俺を慰めようとなさってでしょう  やわらかい声でこう話しかけてくださいました、「昨年の10月を覚えていますか? この街、ずっと雨が降っていましたね。あんなに降りつづいたこと、いままでありませんでしたよ。最近おかしくなっていますよね、気象」。


 この街では例年10月は、秋晴れの気持ちのいい日がつづきます。連日、真っ青な空を、モクモクとふくらんだ真っ白な雲や、子供たちの黄色い歓声が流れていきます。


 昨年10月の灰色の気象は、そうした例年のものとはかけ離れていました。


 実に俺は先ほど、この街、昨年10月の雨が降りつづく気象を、例年どおりではないことをもって、異常であると決めつけたのではないでしょうか。


 世間のひとたちが立ち話などで「異常気象」という言葉を口にするときもこれと事情は同じではないでしょうか。例年よりも降水量が多いとか少ないとか、例年にはない時期に雨または日照りがつづくとか、例年よりも気温が低いもしくは高い日がつづくといったように、気象が「例年どおりではない」のを、困ったような顔をして、異常気象と呼ぶのではないでしょうか。


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