*短編集「統合失調症と精神医学と差別」の短編NO.50
でも、電柱が一瞬一瞬答えるのはその問いだけではありませんね?
太陽が雲間に隠れれば、電柱はその姿を黒っぽくし、ふたたび太陽が顔を覗かせれば、その姿を黄色っぽくします。
なら、こういうことになりませんか? 電柱は一瞬一瞬答えるものだ、「太陽や雲らと共に在るにあたってどのようにあるか」という問いにも、って?
電柱は、先ほど近くを大型トラックが通ったとき、身を揺すりました。そのとき、電柱がこうしたことにも一瞬一瞬答えるものであることが実質明らかになったのではないでしょうか、「トラックや道路らと共に在るにあたってどのようにあるか」という問いにも?
では、今度は、電柱に近寄っているいまの俺のまえに、他人がサッと割り込んできたとしたら、どうでしょう? どうですか。電柱はそのとたん、姿全部を、そのひとの身体の向こう側で「見えないありよう」に変えませんか。
電柱は一瞬一瞬答えるものではありませんか、「俺以外の人の身体と共に在るにあたってどのようにあるか」という問いにも?
要するに、以上のことをまとめると、ひと言でずばり、こういうことになるのではありませんか。
電柱は一瞬一瞬答えるものである、「他のものたちと共に在るにあたってどのようにあるか」という問いに、って。
つまり比喩的に言えば、電柱は周りの空気を読むものなんだ、って。
さあ、いま、まれに見る不細工な表現でこう言いました。電柱は一瞬一瞬答えるものだ、「他のものたちと共に在るにあたってどのようにあるか」という問いに、って。でも、そう言えるのは、何も電柱だけではありませんね。この世にある存在はすべて、電柱以外のいかなる物も、みなさんが耳にする音も、嗅ぐ匂いも、味わう味も、みなさんの身体もみな、そうですね。
けど、それらについてイチイチ、いまやったように細かくは見ていきませんよ。時間も労力もありませんし、ね? ただ、身体と音についてだけはちょっと簡単に確認しておきましょうか。身体はここでの話題の中心ですし、また音について少し確認しておけば、匂いや味などについてはすぐにそこから連想が働くでしょうし、ね?
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