(新)Nothing happens to me.

科学には、人間を理解することを妨げる理論的欠陥がある

アルツハイマー型認知症⑨:着替えができなくなったり、同居家族の顔がわからなくなったりする(失行と失認の)理由(2/4)

認知症の人間の言動は理解不可能か・第13回

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◆失行

 先の引用文に出ていたその具体例は次の二つである。

  • ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなる。
  • 着替えができなくなる(着衣失行)


 これらについてまず考察していく。


 以前に為した考察を最初に持ち出してみよう。


 このBの②「失行」に至るまで、アルツハイマー認知症の症状と呼ばれるものはこういう状態のことを指すのではないかということだった。すなわち、それまでなら集中してすることのできていた、料理や言葉のやりとりといったことに、意欲や興味が減退していて集中できず、それらのことを「上の空」ですることしばしばになった状態ではないか、と。


 そうした意欲と興味の減退が進行していけば、料理や言葉のやりとりといったことにヨリ集中できなくなり、ヨリ「上の空」でそうしたことをすることになるが、それは別の言い方をすると、料理をしていく意思や、言葉のやりとりをしていく意思といったものが弱くなっていくということであり、その意欲と興味の減退が更に進んでいけばついにはそうした料理をしていく意思や、言葉のやりとりをしていく意思は身に全く湧き出てこなくなるのではないかと推測される。


 このBの②「失行」とはそうした意思の衰弱喪失のことでないだろうか。俺たちは幼少の頃に、ボールペンを使用して字を書いていく意思や、服を着替えていく意思を身につける。そうした意思が、いま言った意欲と興味の減退が進行していった結果、弱り切った、もくしは身に全く湧いて出てこなくなったのがこの「ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなる」であり、「着替えができなくなる(着衣失行)」ではないだろうか。






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