*認知症の人間の言動は理解不可能か・第12回
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今回は「トイレの場所がわからなくなって失禁する」を検証する。果してそれは医学が説いてきたようにほんとうに「理解不可能」な言動か。
が、その前にここまでの経緯を簡単にふり返ろう。
医学はひとを認知症だとか軽度認知障害だとかと診断し、「異常」と認定することによってそのひとたちの言動に「理解不可能」の烙印を押してきたけれども、俺たちが理論的な考察を試みた限りでは、この世に「理解不可能」な人間など存在し得ない、ということだった。
そこで俺たちは、医学に「理解不可能」の烙印を押されてきたそれら言動をひとつずつとり挙げ、ほんとうに「理解可能」か検証することにした。
で、そうするにあたって最初に、長谷川和夫著『よくわかる認知症の教科書』(朝日新書、2013年)の記述をもとに作成したのが次のアルツハイマー型認知症の症状一覧である。
俺たちの検証は当該一覧内のB(中等度)の①「見当識が失われる(失見当)」まで来ている。
A.初期段階
①物忘れが次第に激しくなる(記憶機能の低下)
数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりするようになる。
②段取りを立てて物事を行うことができなくなる(実行機能障害、手順の障害)
言葉のやりとりが難しくなったり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)、料理などができなくなったりする。
③不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態
④物盗られ妄想をするようになる
財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にし、「盗まれた」と主張する。
⑤作話
事実とは異なることを話のなかに織り込む。
B.中等度①見当識が失われる(失見当)
季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁したりする。
②失行
ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなる(着衣失行)
C.高度認知症①対象を認識できなくなる(失認)
いっしょに暮らしている家族の顔がわからなくなる(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難)が起こる。
このBの①「見当識が失われる(失見当)」の具体例として挙げてあった次の三つ、
- イ.季節や時間の意識がなくなる
- ロ.自分のいる場所がわからなくなって道に迷う
- ハ.トイレの場所がわからなくなって失禁する
の中の最後のひとつであるハを今回は点検する。
さっそくであるが、このハにも、ひとつ前の具体例ロ「自分のいる場所がわからなくなって道に迷う」で為した考察が当てはまるように思われる。
今回の「トイレの場所がわからなくなって失禁する」を、その前半部分の「トイレの場所がわからなくなる」と後半部分の「失禁する」のふたつに分けてこれから確認していく。
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