*認知症の人間の言動は理解不可能か・第11回
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前回の続きである。
俺たちが先に作っておいたアルツハイマー型認知症の症状一覧*1の中のB(中等度)の①「見当識が失われる(失見当)」を前回から見ている。その具体例として当該一覧には次の三つが挙げてあった。
- イ.季節や時間の意識がなくなる
- ロ.自分のいる場所がわからなくなって道に迷う
- ハ.トイレの場所がわからなくなって失禁する
ここからロの検証に移る。
医学はこれについても、成人が自分のいる場所がわからなくなって道に迷うだなんて「理解できない」、異常だ、脳がおかしくなっているからだと決めつけてきた。
しかしほんとうに「理解不可能」か。
みなさんはかつて「自分のいる場所がわからなくなって道に迷う」といった経験をしたことはないだろうか。
おそらくあるだろう。が、それは、見知らぬ場所や馴染みの薄い場所でのことであって、アルツハイマー型認知症で見られる、知っているはずの場所で起こるものとは全く別であり、ここでの考察には何の役にも立たない、とみなさんは考えるのではないだろうか。
では、酒に酔った友人、同僚、知り合いが帰り道で迷い、自宅にうまく辿りつけなかったというような話を聞いたことはないか。乗り慣れた電車に乗って帰るだけなのに、別の路線になぜか入り込んでしまってどこかまったくわからない駅に行き着き、結果、数十分で帰宅できるはずのところ、何時間もあっちに行ったりこっちに行ったりし、最後は家族に迎えにきてもらわなければならなかった、といったようなことを耳にした覚えはないだろうか。
このアルツハイマー型認知症のロ「自分のいる場所がわからなくなって道に迷う」で起こっているのも、そうした酔っ払いの友人、同僚、知り合いの身に起こったことと基本的に同じではないか。そう思い為したとき、このロもひょっとすると「理解可能」かもしれないという気が、みなさん、してきはしないだろうか。
さて、いまからこのロ「自分の居場所がわからなくなって道に迷う」について考察していくにあたって最初に、これまでの考察で出くわした物の道理ふたつをあらかじめしっかりと思い出しておくことにしたい。
そのひとつは、アルツハイマー型認知症のA(初期段階)の①「物忘れが次第に激しくなる」を考察しているときに出くわした、「上の空」でしていたことはついいまさっきのことでも、思い出すのは難しい、である。
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で、もうひとつは、その次の②「段取りを立てて物事を行うことができなくなる」で見た、「上の空」では事をし損じる、である。
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それらふたつの物の道理を用いていまから真相に迫っていく。
- 物の道理1.「上の空」でしていたことはついいまさっきのことでも、思い出すのは難しい
- 物の道理2.「上の空」では事をし損じる
*このシリーズの記事一覧
*1:アルツハイマー型認知症の症状一覧(長谷川和夫著『よくわかる認知症の教科書』の記述をもとに作成)
A.初期段階
①物忘れが次第に激しくなる(記憶機能の低下)
数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりするようになる。
②段取りを立てて物事を行うことができなくなる(実行機能障害、手順の障害)
言葉のやりとりが難しくなったり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)、料理などができなくなったりする。
③不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態
④物盗られ妄想をするようになる
財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にし、「盗まれた」と主張する。
⑤作話
事実とは異なることを話のなかに織り込む。
B.中等度①見当識が失われる(失見当)
季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁したりする。
②失行
ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなる(着衣失行)
C.高度認知症①対象を認識できなくなる(失認)
いっしょに暮らしている家族の顔がわからなくなる(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難)が起こる。
