*認知症の人間の言動は理解不可能か・第8回
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◆身近にいる人(介護をしている人など)に『盗まれた』と主張する
今度はこんな場面を想定してみる。
みなさんは財布を家のどこかに「置き忘れ」た。在ると思っていた場所や、在る可能性のある場所を探してみたが、どこにも見つからない。
しかしみなさんからしてみると、自分が財布を無くすようなことをしたはずはない。つまり、みなさんには、財布を無くしてしまうようなことをしていない「自信」がある。
いまこう仮定した。みなさんは実際のところ財布をどこかに置き忘れた。それが「現実」である。ところがみなさんには、財布を無くしてしまうようなことをしていない「自信」がある。そのように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつではないだろうか。
- A.その背反を無くすために「自信」のほうを「現実」に合うよう修正する。
- B.その背反を無くすために「現実」のほうを「自信」に合うよう修正する。
この場面でみなさんがとるのはBの「現実のほうを自信に合うよう修正する」であるということにしてみよう。みなさんは、財布を無くすようなことをしていない「自信」に合うよう現実を修正する。
こんなふうに。
財布を無くすようなことはしていない。なのに見つからないとなると、さては盗まれたな。盗んだのは、財布のある場所のことをよく知っていた人間に違いない。なら、それは介護者だ。
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