*認知症の人間の言動は理解不可能か・第6回
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その引用元の本の中で、アルツハイマー型認知症のA(初期症状)の②「段取りを立てて物事を行うことができなくなる」は「実行機能」の障害とか「手順」の障害と説明されていた。その具体例としてそこに挙げてあった二つは「言葉のやりとりが難しくなる(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)」と「料理などができなくなる」で、そんな当たり前のことができなくなってしまうなんて「理解できない」、「異常」だ、実行機能「障害」だ、という具合である。
けれども、ほんとうに「理解不可能」だろうか。
みなさんも日常生活で「言葉のやりとり」がうまくいかなかったり、「料理」などができなかったりする場面を経験することはないだろうか。
いや、あるだろう。
ではそれはどんなときか。
それは、会話や料理などの作業ににうまく集中できていないときではないか。
言い方を換えれば、会話や料理といった作業を「上の空」でしているとき、ではないか?
前回、アルツハイマー型認知症のA(初期段階)の①「物忘れが次第に激しくなる」について考察し、得た結論がここでも当てはまるように思われる。
その①「物忘れ」の具体例として挙げてあったうちの一つは「数分前に食事したことを忘れる」だったけれども、それを用いて言えば、前回為した推測はこういうものだった。
食事に、意欲や興味が減退していて集中できず、「上の空」で食事をしている。しかし「上の空」でしていたことはついいまさっきのことでも、思い出すのが難しいのが物の道理であって、果してその数分後、実際、食事をしていたことを思い出せないということではないか、と。
今回考察している②「段取りを立てて物事を行うことができなくなる」も同じくその「上の空」にまつわる現象ではないか、というわけである。
言葉のやりとりに、意欲や興味が減退していて集中できず、「上の空」で会話をしている。で、言葉のやりとりに躓く。言葉がうまく出てこなかったり、「あー」とか「えー」や、「あれ」とか「これ」といった言葉を乱用したりすることになる、ということではないか。
料理に、意欲や興味が減退していて集中できず、「上の空」で料理をしている。で、手順を間違ったり、立ち往生してしまったり、塩を入れるのを忘れてしまったり、全然必要ないところで引き出しを開けていたりする、ということではないか。
言い換えるとこういうことである。
前記①の「物忘れが次第に激しくなる」の考察で発見することになった物の道理はいまも書いたように、「上の空」でしていたことはついいまさっきのことであっても、思い出すのは難しい、ということであるが、今回の考察でいま出くわすことになっているのは、というより再確認することになっているのは、「上の空」だと事をし損じる、それも特に難易度の高い作業については尚更、という極々当たり前の、誰でも知っている物の道理ではないか、ということである。
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*2025年5月6日に文章を一部修正しました。