*認知症の人間の言動は理解不可能か・第6回
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ひとをその認知能力の低下具合から認知症とか軽度認知障害と診断し、「異常」と見なすことは、そのひとたちの言動に「理解不可能」の烙印を押すことであると先に確認したけれども、理論的に考察する限り、この世に「異常」な人間、すなわち、「理解不可能」な人間など存在し得ない、ということだった。
要するに、認知症とか軽度認知障害と診断されてきたひとたちの、「理解不可能」の烙印を押されてきた言動は理論的には、「理解できる」はずであるとのことだった。
そこで、認知症に分類される、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病、の4つを順に挙げ、その症状を一つひとつ実地にほんとうにそのとおり「理解可能」か検証することにした。
そのとき冒頭で、長谷川和夫著の『よくわかる認知症の教科書』(朝日新書、2013年)内の説明にもとづいてアルツハイマー型認知症の症状なるものの一覧を次のように作成した。
今回見るのはその中のA(初期段階)の②である。
A.初期段階
①物忘れが次第に激しくなる(記憶機能の低下)
数分前に食事したことを忘れたり、曜日や日にちがわからなくなって、周囲に何回もおなじことを聞いたりするようになる。
②段取りを立てて物事を行うことができなくなる(実行機能障害、手順の障害)
言葉のやりとりが難しくなったり(失語、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなって意味が通じにくくなる)、料理などができなくなったりする。
③不安、不穏(落ち着きのなさ)、うつ状態
④物盗られ妄想をするようになる
財布などの貴重品をどこかに置き忘れて、それを身近にいる人(介護している人など)の責任にし、「盗まれた」と主張する。
⑤作話
事実とは異なることを話のなかに織り込む。
B.中等度①見当識が失われる(失見当)
季節や時間の意識がなくなったり、自分のいる場所がわからなくなって道に迷ったり、トイレの場所がわからなくなって失禁したりする。
②失行
ボールペンなどこれまで当たりまえに使えていた道具が使えなくなったり、着替えができなくなる(着衣失行)
C.高度認知症①対象を認識できなくなる(失認)
いっしょに暮らしている家族の顔がわからなくなる(相貌失認)。また、大小便の失禁、摂食障害・嚥下障害(食べたり、飲み込んだりが困難)が起こる。
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