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科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

医学の副作用の侮り方その2、いきなり「夢の新薬」と高らかに謳いあげる(2/5)【医学は副作用を侮ってきた? part.5】

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」の短編NO.46


◆胸に兆す「そんなうまい話はあるのだろうか」という疑念

 本題に入ります。

大部分の抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体を遮断する作用をもつが、クロザピンは、唯一例外的にドーパミンD2遮断作用が非常に弱いにもかかわらず、統合失調症の症状を顕著に改善薬である。


 一九六〇年代に開発されるや、この革命的な薬は、手が震えたり、体が強張ったりといった副作用を生じることなく、統合失調症の症状を劇的に改善させた。幻覚や妄想だけでなく、無気力や自閉といった陰性症状もよくなったのである。投与された患者の多くは、「元にもどったという表現がふさわしい回復を遂げた。しかも、これまでの薬剤がまったく無効であった難治性のケースでも顕著な改善効果が認められたのである。「奇跡の薬が現れたと多くの人は歓喜の声を上げた(同書pp.174-175、ただしゴシック化は引用者による)。


 このように新薬を、市場に出てきたばかりの段階でいきなり「奇跡の薬」と断定し、歓喜の声を上げるというのはまさに(精神)医学が副作用を侮っていたことの紛れもない証拠ではないでしょうか。


 だって、「奇跡の薬」だとか「夢の新薬」だとかと謳われながら颯爽と世に出てきた新薬がしばらくすると重篤な副作用の出る危険な薬であるとして使われなくなったという前例はその頃すでに、あったのではないでしょうか(いまは薬のことを言っていますけど、手術などの施術でもそうしたことはあったのではないでしょうか。最初は絶対に安全であると医学は請け合っていたのに、なぜかいつの間にか、危険な施術として禁止になったものが知られていたのではないでしょうか)。

 

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たとえば「ロボトミー手術」なんかはどうでしょう。

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 過去から学ぶみなさんならそれが夢の新薬なのかどうかを見極めるにはもっと時間が要ると考え慎重な態度を崩さなかったのではないかと、俺には思われてなりません。 


「クロザピンは劇的に効くということであるけれども、ほんとうにそんなうまい話はあるのかなあ。麻薬みたいに、あとあと重篤な副作用が出てくるということがなければいいが」、って。

 

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「夢の新薬」と謳われて颯爽と市場に登場したものの、短期間のうちに、服用者の副作用死が相継いだ例として、俺が真っ先に思いつくのは、下記のイレッサです。グロザピンより後の話ですけど。

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