*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.39
◆はじめて神様の声が聞こえたとき
先のインタビュー記事によると、塾が終わったあと、お母さんが迎えに来るのを、もつおさんは公園で待っていた、ということでしたね。
母の迎えを待っている時に突然友達のこと、勉強のこと、家族のこと、当時の悩みや不安がブワッと一気に頭いっぱいに広がって苦しくなったのを覚えてます。何で急にそうなったのかは分からないのですが、パニックみたいになってしまって、とにかくこの苦しみから解放されたい!っと思った時にふと「ベンチを触れば…」という考えが頭に浮かびました。本当に意味がわからなかったんですがとにかく早く解放されたくてその考えに従いました。
触ると一気にパニックは治ってスッキリしましたが、その後はなんだか気持ち悪かったです。変な考えも気持ち悪いしベンチを触って安心してる自分も気持ち悪いし……。
今思えばこの日の1週間前ぐらいから寝不足が続いていてすごく疲れていた気がします。これがパニックを起こしたことと直接何か関係あるかはわからないですが。URL:https://ddnavi.com/interview/743585/a/
最終アクセス日時:2021年5月2日17:00
もつおさんは、「突然友達のこと、勉強のこと、家族のこと、当時の悩みや不安がブワッと一気に頭いっぱいに広がって苦しくな」った。そして「とにかくこの苦しみから解放されたい!っと思った時にふと『ベンチを触れば…』という考えが頭に浮か」んだ、とのことでしたね。
実に、悩みと不安でいっぱいになって居たたまれなくなったそのとき、もつおさんは「ベンチを触れば…」(ベンチを触れば大丈夫だ、という意味でしょうか)と考えついた。だけど、もつおさんからすると、自分がそこで、「ベンチを触れば…」と考えついたりするはずはなかったのかもしれませんね。
いや、いっそ、もつおさんのその見立てを、語弊があるかもしれませんけど、こう言い直してみましょうか。そのとき、もつおさんには、自分が「ベンチを触れば…」と考えついたはずはないという自信があったんだ、って。
で、自分が「ベンチを触れば…」と考えついたはずはないとするその自信に合うよう、もつおさんは現実をこう解した。
自分の考えではない「ベンチを触れば…」という思考が、急に頭のなかに入ってきた。「ベンチを触れば…」という誰かの声が聞こえてきたんだ、って。
2021年8月12日に文章を一部訂正しました。
*今回の最初の記事(1/6)はこちら。
*もつおさんがお描きになったその漫画はこちら。
*そのなかの一部が現在、無料で読めます(全11話)。
*前回の記事(短編NO.38)はこちら。
*このシリーズ(全48回を予定)の記事一覧はこちら。