*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.37
◆からかうような声や嫌がらせの声が絶えず聞こえてくる
前回、2浪生のNさんが、新しく通いはじめた予備校で嫌がらせを受けたと言っていた件につき、3つの可能性を挙げて考察しましたよね。
その後、Nさんはすぐに予備校に行かなくなり、追い詰められて、自殺を考えるようになったとのことでしたね。「死ぬことばかり考えるようになった。飛び降り自殺をしようと思い、ビルの屋上に何度か行ったが、怖くてできなかった」とのことでしたね。
死ぬこともできず、さらに追い詰められたわけですね。
そしてその頃、「幻聴も活発で、からかうような声や嫌がらせの声が絶えず聞こえてきた」ということでした。
2浪しているのに、予備校にも行かず、勉強もしないでいる自分を、世間はバカだと嘲笑っているのではないか、ちゃんとしろと非難しているのではないか、とNさんはしきりと気になったのかもしれませんね。
でも、Nさんからすると、自分がそこで世間の目を気にしたりするはずはなかったのかもしれません。
いや、いっそ、Nさんのその見立ても、語弊を怖れながらも、こう言い直してみることにしましょうか。そのときのNさんには、自分が世間の目を気にしているはずはないという自信があったんだ、って。
で、その自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。
ボクを、バカだと嘲笑う声(からかうような声)や、ちゃんとしろと非難する声(嫌がらせの声)が絶えず聞こえてくる、って。
2021年8月16日に文章を一部修正しました。
*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.5)。
- part.1(短編NO.33)
- part.2(短編NO.34)
- part.3(短編NO.35)
- part.4(短編NO.36)
- part.6(短編NO.38)
*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。