(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「思春期に発症し、典型的な経過がみられたケース」を理解するpart.3(統合失調症理解#16)(5/8)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.35


◆ひととすれ違う際、悪口が聞こえてくる

 さて、そんなあるとき、図書館から借りてきた女性アイドルのCDをカセットテープに録音しているところを母親に見咎められ、家出するという出来事が起こったとのことでした。それ以降、Nさんは落ち着きがなくなり、「日中、ふらっと出かけたかと思うと、遅い時間まで戻ってこなかったり、カラオケボックスに行き、三〜四時間も一人で歌っていたりすることもあった」ということでしたね。


 先の引用文には、その頃、幻聴は依然見られていたと書いてありました。こういうことでしたよね。Nさんは「路上で通行人とすれちがう際、『うざいぞ』『このバカなど自分に向けての悪口が聞こえてくると訴えた。しかし、家族はこれを病気の症状とは思わず、受験前で精神的に不安定になっているととらえていた」って。


 自分が落ちこぼれていることを身にしみて実感していたNさんは、世間のひとたちとすれ違うたび、「社会に自分の居場所は無いと肩身の狭さを感じたり、「自分なんかダメだと劣等感を覚えたりするまでになっていた、ということなのかもしれませんね。


 けど、そうしてひととすれ違うさい、自分がそんなふうに「肩身の狭さ」を感じたり、「劣等感」を覚えたりするなんて、Nさんにはまったく思いも寄らないことだったのかもしれませんね。


 いや、いっそ、そのことも裏返しにして、語弊があるかもしれませんけど、こう言い改めてみましょうか。そのときNさんには、自分が肩身の狭さを感じたり、「劣等感を覚えたりしているはずはないという自信があったんだ、って。


 で、その自信に合うよう、Nさんは現実をこう解した。


 すれ違いざまにひとが、「お前の居場所なんか無い(うざいぞ)」とか「お前なんかダメだ(この、バカ)」とか言ってくるのが聞こえる、って。


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今回の最初の記事(1/8)はこちら。


Nさんのこの事例は全6回でお送りします。

  • part.1(短編NO.33)

  • part.2(短編NO.34)

  • Part.3(短編NO.35)


   今回

  • part.4(短編NO.36)

  • part.5(短編NO.37)

  • part.6(短編NO.38)


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