(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

統合失調症の「誰かに嫌がらせを受けていた事実は認められないが、本人曰く、いじめに繰り返しあっていた」「自室にいるとき、女性の顔のようなものが見える(幻視)」を理解する(5/8)【統合失調症理解#16-vol.2】

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.34


 さて、いま、こう推測しました。Nさんは、自分が他人を疑りすぎていることに気づいていなかったのではないか、って。


 要するに自分のことがうまく理解できていなかったのではないか、ということですよ。


 この頃からNさんは、自分自身のことがうまく理解できなくなっていったのではないかと俺、推測します。ほら、思春期って、人間そのものが大きく変わってくる時期ですよね? 体つきも感受性も変わってきますね? 嗜好が変わってきたり、敏感になったり、ね?


 ひょっとすると、Nさんはその頃から、自分のそうした変化にうまくついて行けなくなったのかもしれない、と思うわけです。


 Nさんがそれまで自分自身にたいしてもっていた、「自分はコレコレこういう人間であるというイメージが、思春期になって敏感になり、だんだん通用しなくなってきた。そうしたイメージから、実際の自分が乖離してきた。でも、Nさんにはそのイメージを、乖離してきた実際の自分のありように合致するものとなるよううまく修正することができなかった、ということなのかもしれないな、って。





4/8に戻る←) (5/8) (→6/8へ進む

 

 




2021年8月13日に文章を一部修正しました。


*今回の最初の記事(1/8)はこちら。


*Nさんのこの事例は全6回でお送りします(今回はpart.2)。

  • part.1(短編NO.33)

  • Part.3(短編NO.35)

  • Part.4(短編NO.36)

  • Part.5(短編NO.37)

  • Part.6(短編NO.38)


*このシリーズ(全48短編を予定)の記事一覧はこちら。