(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

〝統合失調症〟に見られた2つのパターン(4/6)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.32


◆「勝手にひとつに決めつける」型

 ではもうひとつのほうに話を移しましょう。そのふたつ目については冒頭で、「勝手にひとつに決めつける」型と名づけました。いまから、それを、以前にもちいた事例を再掲しながら、見ていきます。以下は、短編「統合失調症の『カガヤ臭いという声が聞こえてくる(幻聴)』『殺し屋に狙われているという幻覚(幽霊論)』を理解するpart.2」*1で挙げた例です。

 共同住宅の二階に住んでいた●●さんは〔引用者注:当該書には名前が出ていますが、ここでも伏せさせてもらいますね〕、夜中トイレに行くのが面倒で、誰にも見られないようにいつもこっそりと窓から放尿していた。ある日の晩、いままで嗅いだことがないくらいのにおいが部屋にたちこめたと思うと、窓際に突然緑色と茶色のぶちの牛があらわれ、噛みつかれそうになったのだ。彼は「殺されると思った」と言う(『べてるの家の「非」の援助論』医学書院、2002年、p.98)。


 これについてはこういうことなんじゃないかと推測しましたよね。


 ●●さんはいつも夜中、窓から放尿していた。するとある日の晩、「いままで嗅いだことがないくらいのにおいが部屋にたちこめた」。それは、牛舎なんかに行くとするアンモニア臭がもっと強烈になったような匂いだったのかもしれませんね。そんな強烈な臭いが不意に窓辺から漂ってきた。


 ところが●●さんは、それが夜な夜な自分が窓からしている尿の臭いだとは気づかず、とっさに「牛の怪物か何かの匂いではないか?!」と心配になった。で、急いで窓際に、怯えた目をやるとそこに「緑色と茶色のぶちの牛」が見えた気がした。そして、その怪物にいまにも襲いかかられるように感じて、すくみあがった、ということなんじゃないか、って。


 どうですか。みなさんも、これに似た経験をしたこと、ありませんか。いや、ありますよね?


 たとえば夜中、部屋にゴキブリがいるんじゃないかと心配になること、ありませんか。で、ビクビクしていると不意に視野の隅をゴキブリが横切ったような錯覚をすること、ありませんか。


 ゴキブリがいるんじゃないかと心配になってビクビクしているみなさんが、ゴキブリが見えたように錯覚するその要領で、強烈な臭いから牛の怪物でもいるんじゃないかと心配になった●●さんは、牛の怪物が見えたように錯覚したのかもしれませんね。窓辺のカーテンの影か何かを怪物と見誤ったとか、自分で勝手にそんな怪物の姿をそこに思い描いてしまったとかしたのかもしれませんね?


3/6に戻る←) (4/6) (→5/6へ進む

 

 

今回の最初の記事(1/6)はこちら。


前回の記事(短編NO.31)はこちら。


このシリーズ(全49回を予定)の記事一覧はこちら。

 

*1:こちらの記事です。