(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「メッセージを受けとる」「世界は僕のためにある」「テレパシーで交信した」を理解するvol.1(統合失調症理解#14)(2/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.21


 ただしそのまえに、簡単な下準備をしておきましょうか。小林さんが統合失調症を「突然発症した」とされる日のすこしまえの時期のことを今回はちょっと見ておくことにしますね。


 その時期のことを小林さんはこう書いています。小林さんが以後、頻繁に口にすることになる、「メッセージを受けとる」という表現の意味をここで予習しますよ。

パラダイム・ブック』で想像力を刺激されたのかどうかわからないが、この頃から、テレビ、ラジオ、本からの情報に過敏に反応して、色んなメッセージを受け取るようになった例えば、この時期一番好きなタレントはとんねるずだったが、『オールナイトニッポン』で石橋貴明野坂昭如に殴打された場面を見て、その野坂のあまりの醜態ぶりに、「彼は自分を犠牲にしてとんねるずを応援しようとしているのではないか」と想像してしまった。野坂が衆院選で新潟3区から立候補した時も、「彼は本当は田中角栄が好きで角栄とその陣営を鼓舞するために自分を捨て駒にしたのではないか」と思っている。僕は田中角栄野坂昭如も好きなので、これが一番都合がいい解釈だった(小林和彦『ボクには世界がこう見えていた』新潮社文庫、2011年、pp.54-55、ただしゴシック化は引用者による)。

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)

  • 作者:小林 和彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/10/28
  • メディア: 文庫
 


 小林さんは、その頃からいろんな「メッセージを受けとる」ようになったと言っていましたね。その「メッセージを受けとる」とはいったいどんな作業のことを指すのか、いまから確認してきますよ。


「メッセージを受けとった」例として小林さんは、野坂昭如にまつわるふたつの出来事を挙げていました。ひとつは、野坂がとんねるず石橋貴明とんねるずは、石橋貴明木梨憲武によるお笑いコンビ)を殴打したもの、もうひとつは、野坂が衆院選で新潟3区から立候補したものでしたね。そのふたつの出来事について小林さんが先ほど何と言っていたか、それぞれ順に振り返っていきますよ。


野坂昭如とんねるず石橋貴明を殴る(出来事1)

 まずひとつ目の出来事から。


 野坂がとんねるず石橋を殴打したのを見て小林さんはこう解したとのことでしたね。野坂は自分を犠牲にしてとんねるずを応援しようとしているのではないか」、って。


 野坂が石橋を殴打した。だけど、野坂と、とんねるず、その両方のファンだった小林さんには、野坂がとんねるずに不利益を与えようとするなんて、まったく「思いも寄らないこと」だったのではないでしょうか。小林さんの「予想」からすると、野坂がとんねるずに不利益を与えようとしたはずはなかった、のではないでしょうか。


 いや、そのことをもう少し踏み込んで、いっそこう言ってしまいましょうか、少々語弊があるかもしれませんけど。そのとき小林さんには自信があったんだ、って。野坂がとんねるずに不利益を与えようとしたはずはないという自信が、って。


 で、小林さんは、その自信に合うよう、現実をこう解釈した。


 野坂は、みずから醜態をさらすという犠牲を払って、逆に、とんねるずを応援しようとしているのではないか。


ひとつまえの記事(1/5)はこちら。


前回の短編(短編NO.20)はこちら。


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