*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.20
◆まとめ
さあ、いまこう推測しましたよ。くどいかもしれませんが、振り返ってみますね。
何かきっかけがあったのか、それとも薬の副作用だったのか、ともあれ、ハウス加賀谷さんはいまにも殺し屋に殺されると怯えるようになっていたとのことでしたね。
そんななか、ある日のこと、ビクビクしながら、自宅マンションの窓を開け、外の景色に目をやったとき、向かいのビルの屋上に、黒い服に黒いゴーグルをつけた、いかにも殺し屋といった姿の男が見えた気がした。で、その男に、いまにもライフルをぶっ放してきそうな勢いを感じた(現実)のではないか、ということでしたね。
もちろん、それは錯覚にすぎなかった。感じていることが実は錯覚だったなんてこと、よくありますね? この場合も、何かの影を男と見誤ったとか、自分で勝手にそんな男の姿を思い描いてしまったとかしただけですね?
だけど、ハウス加賀谷さんにはそのとき「自信」があったのではないかということでした。錯覚しているはずはないという自信が(霊感があると主張するひととおなじように)、ね?
で、そんな自信があったハウス加賀谷さんには、ほんとうに、黒い服と黒いゴーグルの男が、向かいのビル屋上にいて、ライフルでハウス加賀谷さんの命を狙っているのだと思われたのではないか、ということでしたね。
要するに、霊感があると主張するひとが幽霊を見るときの要領で、ハウス加賀谷さんは殺し屋を見たのではないか、ということでしたね。
箇条書きにしてみるとこうなります。
- ①いまにも殺し屋に殺されるとビクビクしていたハウス加賀谷さんには、殺し屋が見えた気がした(現実)。
- ②錯覚しているはずはないという自信がそのときあった(誤った自信)。
- ③そんな自信があったハウス加賀谷さんには、ほんとうに殺し屋がいて、命を狙ってきているのだと思われた(誤った現実認識)。
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前回の短編(短編NO.19)はこちら。
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