(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「赤の他人の怒ったような顔写真を見て、自分の父親は怒っているととる」を理解する(統合失調症理解#9)(2/4)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.17


 いま、ひとりの男性が登場しましたね。以下、Eさんと呼ばせてもらいますよ。こう書いてありました。


新聞に父親に似た経団連会長の顔写真が載っていてそれが怒っているように見えたそのことから彼は父親が怒っていると受け取ってしまう。テレビの時代劇に、父親に似た俳優が出て、よい役で活躍していた。最近父親の機嫌がいいのは、そのせいだと思う」。


 みなさん、触発されることって、ありませんか。


 たとえば、誰かが破産したとか、新型コロナウイルスに感染したとかと聞くと、明日はわが身ではないかと急に不安になってくるといったようなこと、ありませんか。もしくは、友人の親御さんが倒れたと聞いて急に、故郷にいるみなさんのご両親の健康が、思い出しように気になってくるといったようなこと、ありませんか。


 Eさんも、そんなみなさんように、自分の父親に似ている経団連会長の顔写真に触発され急に自分の父親のことが気になり出したのかもしれませんね。


 Eさんはその経団連会長の、怒っているように見える顔写真を新聞紙上に目の当たりにしたのをキッカケに、急に自分の父親の機嫌が気になり出した父親がバカ野郎!」「この野郎!」などと言って怒っていたらどうしようと心配になってきた


 ところがそのいっぽうでEさんには自信があったのかもしれませんね。自分が父親の機嫌を気にしているはずはないといった自信が。で、その自信に合うよう、Eさんは現実をこう解した。


 父親の「バカ野郎!」「この野郎!」という怒鳴り声が急に、僕の耳に入ってくるようになった。さては父親は怒っているな、って。


 いまこう推測しましたよ。Eさんは、自分の父親に似ている経団連会長の、怒ったような顔写真を新聞紙上に見たのをキッカケに、急に自分の父親の機嫌が気になり出した。父親が「バカ野郎!」「この野郎!」などと言って怒っていたらどうしようと心配になってきた(現実)。ところがその反面、Eさんには「自信」があった。自分が父親の機嫌を気にしているはずはないといった「自信」が。


 そのように「現実自信とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつのうちのいずれかであるように俺には思われます。

  1. 現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  2. 自信に合うよう現実のほうを修正する


 では、もしその場面でEさんが、前者1の「現実に合うよう、自信のほうを修正する」手をとっていれば、どうなっていたでしょうね? もしとっていれば、Eさんはこう思い改めることになっていたかもしれませんね。


「自分にはこんなふうに父親の機嫌を気にする繊細なところがあるんだな、へー、意外だったなあ」って。


 でも、Eさんが実際にそこでとったのは、後者2の「自信に合うよう、現実のほうを修正する」手だった。Eさんは、自分が父親の機嫌を気にしているはずはないといったその自信に合うよう、現実をこう解した。


 父親の「バカ野郎!」「この野郎!」という怒鳴り声が急に、僕の耳に入ってくるようになった。さては父親は怒っているな。


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