(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「他人が身体のなかに入ってくる」を理解する(統合失調症理解#8)(5/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.16


◆(精神)医学は差別する

 では、今回は、最後にひとつ簡単な考察を付け加えてから、話を締めることにしましょうか。


 いま、(精神)医学にはDさんたちのことを理解するだけの力がないと言いましたね? ところが(精神)医学にはずっと自信がありました。(精神)医学の人間理解力は完璧であるはずだといった自信が。で、その自信に合うよう、(精神)医学は現実をこう解してきました。


(精神)医学にDさんたちのことが理解できないのは、Dさんたちが「理解不可能」だからだ、って。


 要するに、箇条書きでまとめるとこういうことですよ。

  • ①(精神)医学にはDさんたちのことを理解するだけの力がない(現実)。
  • ②(精神)医学には、(精神)医学の人間理解力は完璧であるはずだといった自信がある(現実に背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、(精神)医学は現実をこう解釈する。「(精神)医学にDさんたちのことが理解できないのは、Dさんたちが『理解不可能』だからだ」(現実修正解釈


 そして(精神)医学はDさんたちのことを不当にも、こんなふうに「理解不可能」な人間として、世間に説明してきました。

 統合失調症で特徴的なもう一つの症状は、自分と他者との境界が崩れ、自我が侵犯されることである。これを「自我障害」と呼ぶ。自分と他者の境界を自我境界と呼ぶが、統合失調症の人は、自我境界が脆かったり曖昧だったりするのである。自分の秘密がみんなに筒抜けになっていると感じる「自我漏洩症状」、自分の考えが周囲に広まっていると感じる「思考伝播」はよく出合うものである。(略)


 逆に、外界から他人の思考や異物が自分の中に侵入してきたり、自分をコントロールされるように感じる場合もある。他人の考えが自分の頭の中に入り込んでくるように感じる「思考吹入」、外界(他者)が自我の中に侵入してくるように感じられる「侵入症状」、何者かに操られているように感じる「操られ体験(被影響体験)」なども特徴的な症状である。自我障害を妄想症状に含めて考えることもある(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、pp.97-98)。

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

  • 作者:岡田 尊司
  • 発売日: 2010/10/15
  • メディア: 新書
 


 みなさん、いまの説明、聞きました? どう思いました? そんなふうに説明したのではまるでDさんたちのことを、みなさんとは根本的に異質な、妖怪みたいな何かだと言っているようなものではないかと、愕然としませんでした? そんな説明を聞くと、世間のひとたちはこう誤解してしまうのではないかとひどく心配になりませんでした? 「ああ、Dさんたちは、私たちとはまるっきり別の人間なんだな。理解しようとしてもしょせん無駄だな」って。


 今回は、「他人が身体のなかに入ってくると訴えるDさんに登場してもらい統合失調症と診断され、そのように「理解不可能」と決めつけられてきたそのDさんがほんとうは理解可能であることを実地に確認しました


次回は6月22日(月)21:00頃にお目にかかります。


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前回の短編(短編NO.15)はこちら。


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