(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「監視されている」「数字が合図を送ってくる」「盗聴されている」を理解する(統合失調症理解#4)(4/8)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.11


◆数字が合図を送ってくる

 つぎはイです。


 男性はさらに「数字が気になって、目にする数字に何か意味があり、自分に合図を送っているように感じた」とのことでしたね。転職後の会社では職務柄、数字の記載された書類や表(財務諸表とか、営業目標もしくは営業結果を書いた表とか)を見て、そこにある数字の意味を把握しておかなければならないといったことがよくあったのかもしれませんね。で、おのずと、数字の意味を読み解こうとする習慣が男性についたのかもしれませんね。そしてついには、どんな数字を見ても、その意味するところを読み解こうとせずにはいられなくなった。いったん数字が目に入ると、それが新聞紙上のものであれ、路上の看板に書かれたものであれ、何であれ、その意味を読み解かなければならないといった(苦しい)義務感を覚えるようになったのかもしれませんね。


 だけど男性は、まさか自分がそんな義務感を覚えるようになっているのだとはつゆ思い至らなかった。そのことを、ちょっと語弊があるかもしれませんけど、男性にはこうした自信があったと言い換えてみましょうか。数字の意味を読み解かなければならないという義務感を自分が覚えているはずはないといった自信があったんだ、って。


 で、男性はその自信に合うよう現実をこう解した


 ありとあらゆる数字が僕に、意味を読み解くよう「合図を送ってきて」僕を責め苛む、って。


 いまこんなふうに推測しましたよ。


 男性はどんな数字を目にしても、その意味を読み解かなければならないといった義務感を覚え、苦しむようになった(現実)。ところがその反面、男性には「自信」があった。数字の意味を読み解かなければならないという義務感を自分が覚えているはずはないといった「自信」が。そのように「現実自信とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、先にも言いましたように、つぎのふたつのうちのいずれかであるように俺には思われます。

  • A.現実に合うよう、自信のほうを修正する。
  • B.自信に合うよう現実のほうを修正する


 で、男性はこの場面で、後者Bの「自信に合うよう、現実のほうを修正する」手をとった。すなわち、数字の意味を読み解かなければならないという義務感を自分が覚えているはずはないといったその自信に合うよう、現実をこう解した。


 ありとあらゆる数字が意味を読み解くよう「合図を送ってきて」僕を責め苛む、って。


 いま言ったことを、しつこいようですが、箇条書きにしてまとめてみますね。

  • ①どんな数字を目にしても、その意味を読み解かなければならないといった義務感を覚え、苦しい(現実)。
  • ②数字の意味を読み解かなければならないという義務感を自分が覚えているはずはないといった自信がある(現実と背反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解する。「ありとあらゆる数字が意味を読み解くよう『合図を送ってきて』僕を責め苛む」(現実修正解釈)。


 いままた俺はこう指摘しましたね? 男性は「現実修正解釈」をしたんじゃないか、って。現実と背反している自信に合うものとなるよう、現実のほうを修正したんじゃないか、って。でも、男性を批判するつもりでそんなことを言ったのではありませんよ。男性のことを批判しようだなんてめっそうもないことですよ。自信に合うよう、現実のほうを修正するそうした手を、程度の差はあれ、ふだん誰だってとりませんか。みなさんも、世間のひとたちも、俺も、そうした手をとりませんか。この男性も、みなさんや世間のひとたちや俺とおなじように、ついそうした現実修正解釈をとってしまっただけなんだとしか俺には考えられませんよ。


 さて、ここまで、先に挙げた3つの体験から、そのふたつを見てきました。つぎが最後の体験(ウ)になります。幻聴に当たらない場合と、当たる場合とをそれぞれ想定していきますね。


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2020年5月23日に文章を一部修正しました。


今回の最初の記事(1/8)はこちら。


前回の短編(短編NO.10)はこちら。


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