*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.8
くどいかもしませんけど、いま見たところをもうちょっと詳しく確認してみます。
男性患者さんには自信があったのではないかということでしたよね。自分が周りのひとたちにも内心悪く思われているのではないかと気にしているはずはないという「自信」が、って。だけど現実はその「自信」とは背反していた。実際、男性患者さんは、家族からの電話をきっかけに、そうしたことを気にするようになっていた。
このように「自信」と「現実」とが背反するに至ったとき、みなさんならどうします? そういうとき、みなさんにとれる手は、つぎのふたつのうちのいずれかではないかと俺は考えます。
- A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
- B.その背反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。
で、男性患者さんがとったのはどちらの手でした? そう、後者でしたね。自分が周りのひとたちにも内心悪く思われているのではないかと気にしているはずはないとする自信に合うよう、男性患者さんは現実をこう解釈したのではないかとのことでしたね。
「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」といった悪口が聞こえてくる、って。
いま見ましたところを箇条書きにするとこうなります。
- ①周りのひとたちにも内心悪く思われているのではないかと気になる(現実)。
- ②自分がそうしたことを気にしているはずはないという自信がある(現実と背反している自信)。
- ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「ボクの悪口が聞こえてくる」(現実修正解釈)。
2021年8月3,11日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/5)はこちら。
*前回の短編(短編NO.7)はこちら。
*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。